日銀の植田和男総裁は、日本経済は緩やかに回復しているものの、中東情勢を受けて一部に弱さが残ると述べた。基調的なインフレ(生鮮食品など一時的に価格が動きやすい品目の影響を除いた物価の動き)は、日銀目標に向けて徐々に加速しており、景気と物価はいずれも概ね見通しに沿っているという。
植田総裁は、紛争の影響で金融市場が不安定になっていると指摘し、インフレ(物価上昇)には上振れ・下振れ双方のリスクがあるとした。原油高は交易条件(輸出価格に対する輸入価格の比率)が悪化することで日本経済の重荷になり得る一方、インフレ期待(家計や企業が見込む将来の物価上昇率)が高まれば、基調インフレを押し上げる可能性があると述べた。
市場の反応と政策の背景
直後の市場反応は限られ、ドル円(USD/JPY)は0.3%高の159.70円前後。日銀は日本の中央銀行で、物価上昇率を2%程度にすることを目指す。
日銀は2013年に大規模金融緩和を開始し、資産買い入れで市場に資金を供給した。2016年にはマイナス金利を導入し、10年国債利回りを一定水準に誘導する政策(長期金利を抑える枠組み)も採用した。その後、2024年3月に利上げを実施し、超緩和からの転換を進めた。
日銀の緩和は円安要因となり、2022~2023年には海外の中央銀行が大幅に利上げしたこともあって円安が進んだ。2024年に超緩和から離れたことで、その流れは一部が修正された。物価上昇率が2%を上回った背景には、円安と世界的なエネルギー高に加え、賃金上昇も影響した。
日銀は追加利上げを急がない姿勢をにじませている。植田総裁の発言は慎重な運営を示し、日本と海外の金利差は当面大きいままになりやすい。金利差(国ごとの金利水準の違い)は、長年にわたり円安の主因となってきた。