NYMEX(ニューヨーク・マーカンタイル取引所)のWTI先物は、週明け月曜のアジア時間に7.6%上昇し、1バレル=98.00ドル近辺まで上げた。背景には、ドナルド・トランプ米大統領がTruth.Socialへの投稿で、世界のエネルギー供給の約20%に関わるホルムズ海峡について、「通過しようとする、あるいは出ようとする、いかなる船舶も」海軍により封鎖するよう指示したと述べたことがある。
この警告は、イランが核開発(核兵器に結びつき得る技術・能力の追求)を放棄しなかったため、イランとJD・バンス米副大統領の協議が決裂した後に出された。トランプ氏はまた、海軍に対し「イランに通行料を支払った船舶は、公海(どの国の領海にも属さない海域)であっても捜索し、拿捕(船を止めて制止・拘束すること)せよ」と命じ、「違法な通行料を支払う者に安全な航行はない」と付け加えた。
Hormuz Blockade Threat Drives Oil Spike
米中央軍(CENTCOM)は、月曜午前10時(米東部時間、14:00 GMT)から、イランの港に出入りする海上交通の封鎖(船舶の出入りを軍が止める措置)を開始するとした。別途、サウジアラビアは、同国の東西パイプライン(東部の産油地帯から紅海側へ送る内陸ルート)の送油能力を日量700万バレルまで回復させたと発表した。
日足チャートでは、WTIは98ドル近辺で推移し、20日EMA(指数平滑移動平均:直近の価格をより重視して平均を算出する移動平均)である93.41ドルを上回っている。RSI(14)(相対力指数:買われ過ぎ・売られ過ぎをみる指標)は56.23。目先の下値メドは93.41ドル、上値の目安は106.70ドル近辺。
98ドル方向への上昇は、市場の需給見通しが大きく変わったことを示す。ホルムズ海峡が全面封鎖されれば、1970年代以来で最も深刻な供給途絶となり得る。今後数週間は価格変動が急拡大し、上昇圧力が強まりやすい。
WTIでは、アウト・オブ・ザ・マネーのコールオプション(現値より高い行使価格で、価格上昇に賭ける権利)への資金流入が目立つ。特に6月・7月限で行使価格110ドル超が中心だ。期近オプションのインプライド・ボラティリティ(市場が織り込む将来の変動率)は65%を上回り、相場が急変しやすいとの見方が広がっている。これは急騰に備える保険コストが上がっていることを意味し、上昇が続きやすい。
今回の供給ショックは、ただでさえ需給が引き締まっている局面で起きているため、影響が増幅しやすい。米エネルギー情報局(EIA)の最新統計では、米原油在庫が380万バレル減少した。市場では小幅増加を見込む向きが多く、予想外だった。もともとの供給余力が小さいため、イラン産原油が失われた場合の穴埋めは難しい。
Positioning And Risk Management
テクニカル面では、価格が20日移動平均(20日EMA)である93.41ドルを明確に上回って推移しており、上昇基調を裏付ける。93.41ドル近辺への押し目は、買い増しの好機となり得る。次の上値目標は直近高値の106.70ドル付近で、早期に試す可能性がある。
2022年のウクライナ戦争開始時、WTIは数週間で90ドル近辺から120ドル超へ急騰した。ホルムズ海峡は日々大量の原油が通過するため、今回の脅威は同様、あるいはそれ以上の上昇局面を招き得る。
基本戦略は買い(ロング:価格上昇を見込む持ち高)だが、緊張緩和が急に進むリスクもある。サウジが東西パイプライン能力を回復させたことは一定の下支え要因だが、ホルムズ海峡を通過する日量約2,000万バレル規模を代替できない。したがって、先物の買い持ちを維持しつつ、プット・スプレッド(プットオプションの組み合わせで下落リスクを限定的にヘッジする手法)で下振れに備えるのが有効だ。