WTI(米国の代表的な原油指標)は週明け、上方向に窓を開けて始まり、約8%上昇して再び100ドル水準をうかがった。前週が下落だった反動もある。
上昇の背景には、米国とイランの緊張再燃がある。週末に21時間続いた和平協議は決裂した。
米・イランの緊張が原油高を促す
ドナルド・トランプ米大統領は、イランの港湾と、ホルムズ海峡を通過する海上交通の封鎖を表明した。米中央軍は、米東部時間月曜午前10時(GMT14:00)から、イランの港に出入りする海上交通の封鎖を開始するとした。
ウォール・ストリート・ジャーナルは、トランプ大統領と側近が、和平協議の行き詰まりを受け、封鎖に加えてイランへの限定的な軍事攻撃の再開を検討していると報じた。市場の関心は、封鎖の具体策と、米・イラン停戦(交戦停止の合意)への影響に移っている。
昨年、WTI原油がホルムズ海峡の封鎖を受けて約8%上昇し、100ドル近辺まで急伸した際の市場反応を思い起こす。地政学リスク(国家間の緊張や紛争が経済・市場に与える影響)で、エネルギー資産の価格は短時間で大きく見直され得る。海上の要衝(チョークポイント=物流が集中し、封鎖されると供給が滞る狭い海域)で軍事行動が起きれば、供給網(サプライチェーン)の脆さが一気に表面化する。
こうしたショックは、価格変動(ボラティリティ=値動きの大きさ)を急拡大させる。今後数週間、トレーダーは急変動を前提に備える必要がある。2025年の急騰では不意を突かれた参加者も多く、供給途絶リスクに備えたヘッジ(損失を抑えるための取引)なしにポジション(建玉)を保有することの危うさが示された。直接の封鎖がなくても、足元には似た環境が整いつつある。
市場の変動と取引への示唆
足元の需給は引き締まっている。最新のEIA(米エネルギー情報局)統計では、先週の米国原油在庫が予想以上に320万バレル減少(取り崩し)した。さらにOPEC+(OPEC加盟国にロシアなど非加盟産油国を加えた枠組み)は、2026年第2四半期まで減産(生産量を抑えて供給を絞る政策)を維持する意向を示している。こうした需給要因により、市場は小さな混乱でも反応しやすい。
昨年はイランが焦点だったが、現在は南シナ海での海軍の警戒・哨戒強化が注目されている。南シナ海もエネルギー輸送の要衝で、衝突が起きれば同様の価格急騰を招き得る。ホルムズ海峡での出来事の記憶があるため、この地域で緊張が高まれば、市場はより速く織り込みに動きやすい。
このため、トレーダーはWTIまたはブレント先物に対する長期のコール・オプション(将来、一定価格で買う権利。上昇局面で利益が出やすい)の購入を検討してよい。急騰へのヘッジ、または上昇局面を狙う戦略になる。CBOE原油ボラティリティ指数(OVX=原油オプションから算出される予想変動率の指標)は足元で38近辺と、2025年危機時の高水準を大きく下回る。この水準は、先行きのリスクに比べオプションの保険料(プレミアム=権利の価格)が過度に高くない可能性を示す。オプションは損失が支払ったプレミアムに限定されるため、上昇余地を狙いつつリスクを抑えやすい。
原油以外では、インフレに敏感な資産への波及も意識したい。原油の急騰は、FRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策運営を難しくし、金利や株価指数に連動するデリバティブ(先物・オプションなどの金融派生商品)に影響し得る。昨年の上昇は、2025年後半にインフレが粘着(下がりにくい状態が続くこと)した要因の一つだった。