DBSグループ・リサーチは、シンガポール金融管理局(MAS)が4月14日の会合で、シンガポールドルの名目実効為替レート(SGD NEER)の政策バンドの「傾き」を小幅に上方修正すると予想している。これは、昨年実施された傾き引き下げ(引き締め度合いの弱まり)の反転となる見込みだ。
この予想の背景には、北海ブレント原油が1バレル=100米ドル近辺で推移していること、輸出が底堅いことがある。これにより、輸入品の値上がりによる物価上昇(輸入インフレ)への警戒が強まる可能性がある。MASはインフレ見通し(予測)も更新するとみられる。
Expected Inflation Forecast Revisions
コアインフレ(生鮮食品やエネルギーなど価格変動が大きい品目を除いた基調的な物価上昇率)は、従来の1〜2%から1.5〜2.5%へ上方修正される見通しだ。消費者物価指数(CPI)総合(すべての品目を含む指標)も、エネルギー価格の上昇を反映して引き上げられる可能性が高い。
MASは金融政策決定と同時に、2026年1〜3月期(1Q26)のGDP(国内総生産)の速報推計も発表する予定だ。GDPは前年比5.4%、前期比(季節調整済み)-1.1%が見込まれる。2025年10〜12月期(4Q25)の前年比6.3%、前期比(季節調整済み)2.1%からは減速となる。
当社は、MASが4月14日にSGD NEER政策バンドの傾きを小幅に引き上げ、金融政策を引き締め方向に動かすとみる。MASの枠組みでは、傾きは時間の経過に沿った通貨高(または通貨安)のペースを示し、傾きを上げることは、より速いペースでの通貨高(ただし急激ではない)を許容して物価上昇を抑える狙いを意味する。
焦点は輸入インフレの抑制に移っている。背景には、ブレント原油価格が四半期を通じて1バレル=100米ドル付近で高止まりしていることがある。直近データもこの判断を支える。シンガポールの非石油国内輸出(NODX:石油関連を除く輸出の指標)は2026年3月に前年比4.5%増と底堅く、通貨高に対する耐性を示している。これにより、当局は物価優先の姿勢を取りやすくなる。
Trading Implications For Sgd
デリバティブ(金融派生商品)取引では、米ドルなどに対するシンガポールドル高を想定した構えが示唆される。たとえばSGDコールオプション(将来、あらかじめ決めたレートでSGDを買う権利)を買う戦略が考えられる。政策文言がタカ派(引き締めに積極的な姿勢)寄りなら、通貨高につながりやすい。過去には、MASが2022年に市場予想を上回る引き締めを行った後、SGDは対米ドルでその後3カ月ほど大きく上昇した。
同時発表される1Q26のGDP速報(当社予想は前年比5.4%)も、引き締めを正当化しやすい材料となる。2025年後半からは減速でも、景気の基調が崩れていないことを示すためだ。先物為替予約(フォワード:将来の為替レートをあらかじめ固定する契約)で会合前にSGDロング(SGD買い)を組む手もある。
また、この政策変更は国内金利の上昇圧力になりやすい。シンガポール翌日物金利の平均であるSORA(Singapore Overnight Rate Average)には上昇を見込みやすい。金利スワップ(固定金利と変動金利の支払いを交換する契約)で備える戦略も考えられる。3月のコアインフレが2.1%と高めで、金利上昇を後押ししやすい。
SGDオプションのインプライド・ボラティリティ(市場が織り込む将来の値動きの大きさ)も、発表まで高止まりしやすい。鍵は、MASが公式インフレ見通しを上方修正するかどうかだ。コアインフレ見通しが1.5〜2.5%に引き上げられれば、タカ派への転換を裏付け、今後数週間のSGD高を支えやすい。