米ドル指数(DXY)は99.0をわずかに下回る水準で推移している。中東で持続的な和平合意が成立し、ホルムズ海峡(中東の重要な海上輸送ルート)を通る海運が通常状態に戻れば、さらに下落する可能性がある。
注目は3月の米消費者物価指数(CPI、消費者が購入する商品・サービスの価格動向を示す指標)の発表。市場では、総合CPIが前年比で0.9ポイント上昇し3.4%になると見込まれている。食品とエネルギーを除いたコアCPI(物価の基調を示す指標)は、前月比で0.2%から0.3%へ小幅に上向く予想だ。
米連邦準備制度理事会(FRB)はコア物価に注目
FRB(米国の中央銀行)は、エネルギー価格上昇の「二次的影響」(燃料高が輸送費やサービス価格に波及する影響)が数カ月遅れてコア物価に表れる可能性に注目するとみられる。CPIが予想を大きく上回らない限り、この指標だけでFRBの市場見通し(利下げ・据え置きの織り込み)が大きく変わる可能性は低い。
インフレ(物価上昇)は米国内政治にも影響し得る。共和党の一部には戦争への反対やガソリン価格上昇への懸念があり、これがドナルド・トランプ大統領に和平合意を急ぐ圧力となる可能性がある。
インフレが話題になる中、短期的なドル安は続きにくくなる可能性がある。米ドルの短期的な値動きは、引き続き中東情勢が最大の材料とされている。
きょうの市場材料と取引の考え方
ホルムズ海峡が落ち着く一方、足元では南シナ海での海軍の対立が継続的なリスクとして意識されている。こうした緊張は、リスク回避局面で買われやすい「安全資産」としてのドル需要を下支えしている。米海事局(U.S. Maritime Administration)のデータでは、同地域に関連する船舶保険料(航行リスクを反映した上乗せコスト)が直近四半期で5%上昇しており、市場の警戒感を示す。
2025年当時に想定された小幅なコアCPIの加速と異なり、足元の課題は「粘着的なインフレ」(下がりにくい物価上昇)だ。2026年3月の最新統計ではコアインフレ率が3.1%で高止まりし、FRBが「ハト派への転換」(利下げに前向きな姿勢)を明確に示しにくい状況が続く。これにより、年後半の利下げ期待は不透明になっている。
この状況は、ドル指数が99.0を下回らず、現在は104.5前後で底堅く推移していることの背景でもある。市場が、主要国と比べ米金利が「より長く高水準で続く」(higher-for-longer)と見込んでいることがドル高を支えている。
デリバティブ(金融派生商品。原資産の価格変動に連動する取引)投資家にとっては、明確な方向性よりも変動(ボラティリティ)の継続に備える局面になりやすい。例えば、EUR/USDの「ロング・ストラングル」(同じ満期で、権利行使価格の異なるコールとプットを同時に買う戦略。上下どちらかに大きく動けば利益になりやすい)は、FRBの想定外の発言や地政学リスクの再燃による大きな値動きで収益機会がある。Cboe FXボラティリティ指数(EUVIX、主要通貨の予想変動率を示す指数)は7.8へ上昇しており、相場の振れが大きくなりやすいことを示唆する。
米インフレ指標の強さが続くことを踏まえると、短期の戦術としては「Invesco DB 米ドル指数ブル型ファンド(UUP)」の近い満期のコール・オプション(一定価格で買う権利)を買う選択肢がある。FRBが利下げを先送りすれば上昇の恩恵を受けられ、損失は支払ったオプション料(プレミアム)に限られる。DXYが104.5付近の上値抵抗(上がりにくい水準)を試している局面では、上抜けて昨年末に見られた105.50近辺まで上昇する展開で利益になりやすい。