銀(XAG/USD)は金曜のアジア時間に、1トロイオンス=76.00ドル近辺で推移し、上昇基調を維持した。米国とイランの停戦により原油価格が急落し、インフレ再燃や中央銀行の追加利上げ(政策金利の引き上げ)への警戒が和らいだことが下支えとなった。
週前半の米ドル安も追い風となった。ドル建てで取引される銀は、ドルが弱いと他通貨で購入する投資家の負担が軽くなり、需要を押し上げやすい。一方、停戦がどれだけ続くか不透明な中で市場心理が慎重(リスク回避)に傾き、ドルが下げ止まったことで、上値が抑えられる可能性もある。
地政学リスクとドルの動き
イスラエルがヒズボラへの攻撃を継続する一方、ベンヤミン・ネタニヤフ首相は、イスラエルが近くレバノンと直接協議を始めると述べた。ドナルド・トランプ米大統領は、合意の全面順守が確認されるまで米軍はイラン周辺で展開を続けるとした。
市場は週末に予定されるイスラマバードでの協議にも注目している。JD・バンス米副大統領が米側代表としてイラン当局者と会談する可能性がある。ただし金曜時点で、代表団到着の公式な確認は伝わっていない。
米連邦準備制度理事会(FRB、米国の中央銀行)の3月会合議事要旨では、政策担当者が「様子見」の姿勢を維持していることが示された。また、原油高に伴うインフレリスクについては、以前よりバランスしてきたとの認識も示された。市場は北米時間後半に発表される米消費者物価指数(CPI、消費者が購入する商品・サービスの平均的な値動き)を待っている。
変動性(ボラティリティ)とオプション戦略
CPIの結果次第で相場が大きく動き得るうえ、停戦の先行きも不確実なため、インプライド・ボラティリティ(オプション価格から逆算される将来の予想変動率)は高水準にある。CBOEボラティリティ指数(VIX、米株式市場の予想変動率を示す指標)は25近辺で推移し、長期平均を上回っており、今後数週間の大きな値動きが意識されている。デリバティブ(株や商品などを原資産とする金融派生商品)取引では、方向性だけに賭けるのはリスクが高い局面といえる。
高い変動性を利用する手段として、銀ETF(上場投資信託)を対象としたロング・ストラドルやロング・ストラングルが選択肢となる。コール(買う権利)とプット(売る権利)の両方のオプションを購入することで、予想を上回る物価鈍化で上昇しても、停戦の不安定化で下落しても、大きな値動きが出れば利益を狙える。結果の見通しが難しいイベントでも、方向を当てる必要を減らせる。
また、銀価格が高水準にある局面では、プットの購入はヘッジ(損失を抑える保険)にも、調整局面を狙う投機にもなり得る。地政学面が落ち着き、FRBが早期の利下げを示さない場合、76ドル水準を正当化する材料は弱まりやすい。2024年に、地政学不安の後退を受けて貴金属が大きく調整した局面は、参考となる過去例だ。