AUD/USDは木曜日に4日続伸し、0.7087近辺と、約3週間ぶりの高値圏に接近した。米国とイランが2週間の停戦で合意したことで、米ドルは下落した。
ただし、イランが「合意の3項目がイスラエルによるレバノン空爆で破られた」と主張し、市場の落ち着きは後退した。投資家のリスク選好(リスク資産を買いやすい心理)は慎重なままで、豪ドルは主に米ドルの動きに左右された。加えて、豪準備銀行(RBA、オーストラリアの中央銀行)が金融引き締めに前向きと受け止められる見通し(タカ派=利上げ・高金利を長く維持する姿勢)が下支えとなった。
米国・イラン協議と市場の敏感さ
注目は今週末にパキスタンで予定される米国・イラン協議。NBCは米当局者の話として、ドナルド・トランプ大統領がイスラエルに対しレバノンへの攻撃を緩めるよう促したと報じた。ベンヤミン・ネタニヤフ首相は、ヒズボラ(レバノンの武装組織)の武装解除と和平を巡り、レバノンとの直接協議を近く開始すると述べた。
米経済指標は強弱が分かれた。コアPCEインフレ率(個人消費支出物価指数のうち、変動が大きい食品・エネルギーを除いた物価指標)は2月に前月比0.4%、前年比3%と、3.1%から低下した。第4四半期の実質GDP成長率(改定値)は0.7%から0.5%へ下方修正された。
米CPI(消費者物価指数)は金曜日に発表予定。市場予想は前月比0.9%(2月は0.3%)、前年比3.3%(2月は2.4%)。3月のFOMC議事要旨(米連邦準備制度理事会=FRBの政策会合の記録)では、中東情勢の悪化が雇用に悪影響を与え利下げの根拠になり得るとの見方が多かった一方、原油高でインフレが高止まりすれば利上げが必要になり得る、との警戒も示された。
不確実性が高い局面では、オプション取引(一定期間に特定レートで買う/売る権利を売買する取引)で値動きの拡大に備える戦略が考えられる。例えばAUD/USDのストラドル(同じ満期・同じ権利行使価格でコールとプットを同時に買う戦略)は、どちらの方向でも大きく動けば利益になり得る。停戦が崩れれば急落、維持されれば一段高という展開が想定されるためだ。
過去の値動きの大きさと戦略
似た値動きは、2023年10月にイスラエルとハマスの衝突が始まった局面で見られた。VIX(米株式市場の予想変動率を示す「恐怖指数」)は約2週間で30%超上昇した。地政学リスクは短期間で市場の不確実性を高めやすく、原油価格が急騰するリスクもある。原油高はインフレ圧力を強め、金融政策の見通しを揺さぶる。
当時のFRB議事要旨も、金利デリバティブ(将来の金利をもとに損益が決まる取引)の見通しを難しくした。景気悪化なら利下げが必要になる一方、原油高でインフレが高止まりすれば利上げ圧力が強まるためだ。
AUD/USDについては、RBAのタカ派姿勢が一定の支えになっても、最終的には「米ドル全体の動き」と「リスク選好」が主因になりやすい。今週末の協議や米CPIは相場の転機(材料=カタリスト)になり得るため、急変に備えつつ、より明確な方向性を待つのが要点となる。特にCPIが強ければ、停戦の好材料を打ち消して米ドル高となり、AUD/USDは下押しされやすい。