日銀の植田和男総裁は木曜日、実質金利が明確にマイナスだと述べたとロイターが報じた。短期・中期の金利も明確にマイナスだとした。
日本の金融環境は緩和的な状態が続いているとし、その結果、設備投資が緩やかに増えていると述べた。
実質金利のマイナスと円安局面
報道時点でUSD/JPYは前日比0.10%高の158.73。
2024年当時、金融環境が極めて緩和的(資金調達がしやすく、金利が低い状態)だった局面で、実質金利(名目金利から物価上昇=インフレ率を差し引いた金利)がマイナスだという発言が出ていた。こうした環境はUSD/JPYを160近辺の歴史的高値へ押し上げ、現在とは異なる相場状況を作った。当時の中心的な課題は、円安が長期化する中での対応だった。
緩和的な環境は「円キャリートレード」(低金利の円で資金を借り、高金利の通貨・資産に投資して金利差を狙う取引)を拡大させた。米連邦準備制度理事会(FRB)と日銀の政策金利の差は5%ポイント超あり、投資家はほぼ低コストで円を借り、利回りの高い米ドル建て資産へ振り向けた。この偏った取引は相場の流れを強めた一方、反転(巻き戻し)のリスクも積み上がった。
2024年にUSD/JPYが160に接近した局面では、市場の緊張が強まり、為替の変動が急拡大した。オプション取引の参加者は、1カ月物のインプライド・ボラティリティ(市場が織り込む将来の価格変動の大きさ)が10%を上回ったことを思い出すべきだ。これは、急変に備えてオプションでリスク管理する必要性を示している。
デリバティブで介入リスクを管理
財務省が市場に直接介入した局面では、円を売る取引がいかに危険かがはっきりした。2024年4〜5月に当局は約9.8兆円を投じて円買い(市場で円を買い、円安を抑える行為)を実施し、USD/JPYは即座に大きく下落した。デリバティブ(先物・オプション・スワップなどの金融派生商品)戦略では、通貨が大きく下落した際にこうした公的行動が起こり得る点を織り込む必要がある。
その後、日銀はマイナス金利政策(政策金利を0%未満にして景気を刺激する政策)からの脱却を正式に進め、2024年3月には17年ぶりの利上げを実施した。さらに2025年にかけて、インフレ率が2%目標を上回る状態が続いたことを受け、0.25%ポイントの小幅利上げを慎重に重ねた。政策の方向性は、緩やかながらも変化し始めている。
今後数週間は、日銀政策が急変するというより、段階的に正常化していく動きに備え、デリバティブでポジションを組むのが現実的だ。金利スワップ(金利を固定と変動で交換し、将来の金利水準を取引する商品)を使い、次回利上げの時期を見込む取引が考えられる。市場は利上げ時期を第3四半期と見ている。結果として、円の上昇に備える戦略として、コールオプション(将来、あらかじめ決めた価格で円を買う権利。損失を限定しつつ上昇を狙える)で円ロングを持つ手段が、ここ数年より使いやすくなっている。