米ドル指数(DXY、米ドルを主要6通貨に対して測る指数)は水曜日、1カ月ぶりの安値に下落した。米国とイランが2週間の停戦で合意したことを受け、DXYは98.60近辺で推移し、約1%安となった。
安全資産(市場が不安なときに買われやすい資産)としての需要が弱まり、原油価格が急落したことがドルの重しとなった。米国債利回り(米国債の利息水準の目安)も低下。原油高によるインフレ懸念が後退し、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ観測が再び強まった。
テクニカル(価格動向)と重要水準
チャートでは、DXYは1月下旬以降続いていた上向きのチャネル(一定の範囲で上昇してきた値動き)を下抜けた。100.00~100.50の上値抵抗帯(上昇を止めやすい価格帯)を何度も超えられなかった後に下げが強まった。この抵抗帯は2025年5月以降、上昇を抑えてきた。
足元では、50日・100日・200日の単純移動平均線(一定期間の平均値で、相場の流れをみる指標)が集中する98.50~98.60付近の支持線(下値を支えやすい水準)を試している。ここで下げ止まれば指数は落ち着く可能性がある一方、割り込めば下落基調が続く恐れがある。
上値はまず99.00、その先は100.00~100.50が抵抗として意識される。勢いを示す指標は弱く、RSI(14、買われ過ぎ・売られ過ぎをみる指標)は40台前半、MACD(移動平均の差で勢いをみる指標)は0を下回っている。
米・イラン停戦合意を受け、ドル買いの持ち高(ロング)の解消が急速に進んでいる。リスク回避(リスクオフ)からの急な転換により、為替市場の値動きの大きさ(ボラティリティ)の見直しが起きている。デリバティブ(先物やオプションなどの派生商品)を扱う投資家は、VIX指数(株式市場の予想変動の指標)が今週15%超下げて14.5となっている点に注意したい。市場の安心感を反映している。
DXYは98.50近辺の重要な支持帯を試しており、複数の移動平均線が重なって下値を支えている。勢いが弱いことを踏まえると、今後数週間でこの水準を下抜ける展開も視野に入る。98.00や97.50付近の行使価格(権利を実行できる価格)のプット(下落に備える売る権利)を買うことは、損失を限定しつつドル安を狙う方法になり得る。
オプション戦略(選択権取引)とマクロ要因(景気・金融環境)
WTI原油は1バレル=85ドルを割り込み、2月以来の水準となった。これによりインフレ懸念が大きく和らいでいる。先物市場(将来の価格を売買する市場)では、FRBが第3四半期までに利下げする確率が60%まで上昇し、先週の25%から跳ね上がった。金融引き締めに慎重(ハト派)な見方の復活は、直近のドル高を崩す要因となる。
また、100.00~100.50の抵抗帯を維持できなかった動きは、2025年半ばに繰り返し観測された重要な手掛かりだ。この経緯から、直近の上昇は大きな下落基調の中での一時的な戻り(ブルトラップ=上昇に見せかけて反落する動き)だった可能性がある。99.50を上回る水準で、コール(上昇に備える買う権利)のスプレッドを売る(コールスプレッド売り:高い行使価格のコールを買い、低い行使価格のコールを売るなどの組み合わせで受取額を狙う手法)ことは、上値が重い前提で受取額(プレミアム)を得る戦略となり得る。
もっとも、2週間の停戦は不安定で、緊張が再燃すれば安全資産志向へ急反転する可能性がある。ドルのオプションで織り込まれる予想変動(インプライド・ボラティリティ)は大きく低下しており、ストラドル(同じ行使価格でコールとプットを同時に買う)やストラングル(異なる行使価格でコールとプットを同時に買う)は、1週間前より低コストになっている。相場が再び大きく動く可能性に備える手段となる。