インド準備銀行(RBI)は2026年4月8日の金融政策委員会(MPC)で、政策金利であるレポ金利(中央銀行が市中銀行に資金を貸し出す際の基準金利)を5.25%に据え置き、中立姿勢(景気・物価の状況次第で利上げ・利下げのどちらにも動ける立場)を維持した。決定は全会一致で、ブルームバーグが調査した34人のアナリストの予想と一致した。
スタンディング・デポジット・ファシリティ(SDF、銀行がRBIに資金を預ける際の金利)とマージナル・スタンディング・ファシリティ(MSF、銀行が緊急時にRBIから資金を借りる際の上限金利)は、それぞれ5.00%、5.50%で据え置いた。RBIは、中立姿勢により新たに入ってくる情報に応じて対応できると説明した。
成長とインフレ見通し
新しいGDP系列(基準年2022-23)に基づき、RBIはFY27(2026年度)の成長率を6.9%と予測した。四半期別では1Qが6.8%、2Qが6.7%、3Qが7.0%、4Qが7.2%。FY26(2025年度)の成長率は第2次改定推計で7.6%としている。
新しいCPI系列(2024=100。CPIは消費者物価指数で、家計が購入するモノやサービスの価格動向を示す指標)に基づき、RBIはFY27のインフレ率を4.6%と見込んだ。2月のFY26向けMPC予測(2.1%)から上振れする。背景として、西アジア情勢に伴うエネルギー価格の高止まりと、エルニーニョ現象(海面水温の変化で天候に影響し、インドでは雨季の降雨に影響し得る)により南西モンスーン(インドの雨季の降雨)が乱れる可能性を挙げた。
RBIは、食品とエネルギーを除く物価圧力(いわゆる基調的な物価動向)は抑制されるとの見方を示した。UOBはFY27のインフレ率を4.8%と予想し、レポ金利は2026年を通じて5.25%にとどまるとみている。
RBIが政策レポ金利を5.25%に据え置いたことで、短期的には安定が見込まれる。これは、今後数週間の短期金利の変動(ボラティリティ)が小さくなりやすいことを示唆する。値動きの大きさが出にくい局面では、大きな変動が起きないことを前提に利益を狙う戦略が相対的に有利になりやすい。
ボラティリティとオプションのポジション
こうした安定は、オプション売りでプレミアム(オプションの受け取り代金)を得る戦略を後押しする可能性がある。5.25%での据え置きが続けば、金利先物の急変動リスクが低下しやすいためだ。たとえばNifty Bank先物で、アウト・オブ・ザ・マネー(OTM、現時点で権利行使しても利益が出ない水準)のストラングル(コールとプットを同時に組み合わせる取引)を売る戦略は、時間的価値の減少(タイムディケイ、満期接近でオプション価値が減りやすい性質)を取り込みやすい。代表的な市場の変動率指標であるIndia VIX(先行きの変動を示す指数)も低水準で、足元では14を下回っており、当面は政策ショックが織り込まれていないことを示す。
2025年の積極的な利上げはインフレ抑制を目的としたもので、今回の据え置きはその効果が表れ始めた結果といえる。中銀は、成長率が6.9%へ減速する見通しと、インフレ率が4.6%へ上昇する見通しの間でバランスを取っている。2026年3月の最新データでは総合インフレ率(ヘッドライン、全品目の物価上昇率)が4.9%だった一方、基調インフレ(コア、食品・エネルギーを除いた物価上昇率)は落ち着いており、RBIが様子見しやすい環境となっている。
インド・ルピーも、この政策から下支えを得る可能性がある。金利差(インド金利が相対的に高い状態)が維持されると、キャリートレード(金利の低い通貨で資金を調達し、金利の高い資産に投資して利回り差を狙う取引)が行いやすい。低金利通貨で借り入れてインド資産に投資する動きが意識されやすく、5.25%の維持は数カ月の取引環境の見通しを立てやすくする。
ただし、インフレの上振れリスクは引き続き主要な懸念だ。エネルギー価格の高止まりと、エルニーニョによるモンスーンへの悪影響の確率上昇が背景にある。想定外のインフレ上振れに備える手段として、長期国債(デュレーションが長く、金利変動の影響を受けやすい国債)に対するプット・オプション(価格下落時に利益が出やすい権利)の購入を検討する余地がある。インフレにより年後半に利上げが起これば、債券価格は下落し、こうしたプットが利益になり得る。
一方、成長が予測の6.9%以上に鈍化するリスクも無視できない。鉱工業生産などの高頻度データ(短い間隔で発表される景気指標)で想定外の弱さが示されれば、企業収益の重しとなり得る。その場合に備え、Nifty 50指数のプット・オプションを買うことは、景気悪化が想定以上に進む局面へのヘッジ(損失を抑えるための保険的な取引)となる。