AUD/USDは金曜、日中0.91%安の0.7155近辺まで下落し、1週間超ぶりの安値を付けた。米ドルが広く買われたことで、2日続けて売りに押された。
米ドル指数(DXY、主要通貨に対する米ドルの総合的な強さを示す指数)は、4月上旬以来の高水準に近づいた。米国の経済指標が強く、FRB(米連邦準備制度理事会)が金融引き締め(利上げなど)を進めるとの見方が強まった。
米インフレ指標がドルを押し上げ
米CPI(消費者物価指数、家庭が購入する商品・サービスの物価の動き)は4月に前年同月比3.8%と、3月の3.3%から上昇した。PPI(生産者物価指数、企業が仕入れる段階の物価の動き)は6%上昇。小売売上高(消費の強さを示す指標)は前月比0.5%増、鉱工業生産(工場などの生産活動を示す指標)は4月に0.7%増と、市場予想(0.3%増)を上回った。
CMEのFedWatch(先物市場から政策金利見通しを推計する指標)では、年末までに少なくとも1回利上げが行われる確率が約40%と織り込まれ、1週間前の15%未満から大きく上昇した。米国債利回り(債券の利回り。上昇は債券価格の下落を意味する)は上昇し、10年債利回りは約1年ぶりの高水準となった。
米・イラン交渉やホルムズ海峡を巡る緊張が安全資産(市場不安時に買われやすい資産)需要を支えた。トランプ氏と習近平氏の会談に関する前向きな報道はAUD(豪ドル)の下支え要因となったが、限定的だった。RBA(オーストラリア準備銀行、豪州の中央銀行)のタカ派姿勢(利上げに前向きな姿勢)も、米ドル高を打ち消すには至らなかった。
米ドルの強さが際立ち、AUD/USDには強い下押し圧力がかかっている。今週発表された米インフレ指標が想定以上に強かったことを受け、0.6550近辺で上値の重い展開が続く。4月(2026年)の米CPIは3.9%と市場予想を大きく上回り、物価上昇圧力が続くとの警戒が再燃した。
FRB見通しの変化が市場を動かす
景気指標の強さを背景に、FRBの次の一手に対する見方が変化している。CME FedWatchによれば、市場が見込む年内利下げ(政策金利の引き下げ)の確率は40%未満へ低下し、数週間前の70%超から大きく縮小した。これが米金利を押し上げ、投資家にとってドルの魅力を高めている。
こうした動きは過去にも見られた。2025年には強い経済指標が続き、利下げ期待が後ろ倒しされ、米ドルが数カ月にわたり上昇した。今回も堅調な指標が続けば、ドル高が長引く可能性がある。
世界的な不確実性もドルを支える。南シナ海の緊張が高まり、サプライチェーン(供給網)への影響が意識されやすい。リスク回避(投資家が危険資産を避ける動き)の局面では、豪ドルのような景気敏感通貨より米ドルが選好されやすい。
一方で、RBAはタカ派姿勢を維持しており、豪ドルの下支え要因ではある。ただ、現時点では米ドル買いの勢いが強く、AUD/USDの下落を止める力は限られる。RBAの姿勢は短期的に下落ペースを鈍らせる程度にとどまる可能性がある。