欧州の「グローバル・ユーロの瞬間」はなお未達──分断された市場と貯蓄が通貨の足かせに

    by VT Markets
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    May 15, 2026

    クリスティーヌ・ラガルド氏は2025年、分断された世界秩序が欧州に「世界的なユーロの好機(global euro moment)」をもたらしたと述べた。カーステン・ブジェスキ氏は、欧州はその好機をまだ手にしていないと指摘する。

    同氏は、資本市場の分断と、家計が抱える巨額の貯蓄が十分に活用されていない点に結び付ける。これらがユーロの国際的な役割(貿易決済や投資、外貨準備で使われる度合い)を制約しているという。

    欧州はまだ「好機」を勝ち取れていない

    過去12カ月で欧州は、2025年3月に「貯蓄・投資同盟(Savings and Investment Union:家計貯蓄を投資に回し、資本市場を一体化させる構想)」を立ち上げた。ほかにも、証券化(貸出債権などをまとめて証券として売買可能にする仕組み)改革、市場統合と監督の包括策、決済サービス規則の改定、貯蓄・投資口座(家計の資産形成を促す口座制度)の勧告などがある。

    欧州投資銀行(EIB)の防衛投資は3倍に増えた。EUの防衛支出は2022年以降で36%増加している。

    欧州の主要6カ国は、夏までの資本市場に関する合意を求める共同書簡を送った。

    2025年に唱えられた「世界的なユーロの好機」を振り返ると、1年後のいまも、構造改革の実行が十分ではない。ユーロは対ドルで比較的狭いレンジで推移しており、強い追い風となる材料が乏しいことを映している。市場参加者にとっては、今後数週間もレンジ相場が続きやすいとの見方につながる。

    根本問題の一つは、十分に使われていない家計貯蓄の巨大な滞留で、投資と経済の活力を抑える要因となる。2026年1〜3月期のユーロスタット(EU統計機関)データでも家計貯蓄率は14.2%と高止まりし、2020年以前を大きく上回った。この重荷は、ユーロが大きく上昇しにくいという前提の戦略を支える。例えば、EUR/USDのアウト・オブ・ザ・マネーのコールオプション(現時点の相場より高い水準で買う権利で、満期時に届かなければ行使されない)を売る手法である。

    ボラティリティは低水準のまま

    方向感の乏しさから価格変動(ボラティリティ)が抑え込まれ、CBOEユーロ通貨ボラティリティ指数(オプション価格から算出した市場予想の変動率)は、数年ぶりの低水準付近にある。予想変動率(インプライド・ボラティリティ:オプション価格が示す将来の変動見通し)が低い局面では、オプション戦略のコストが相対的に小さく、巨額の資金を投じずにブレイク(レンジを抜ける大きな変動)に備えられる。ロング・ストラドル(同じ満期・同じ行使価格でコールとプットを同時に買い、上下どちらかの大きな動きに賭ける戦略)は、今後のECB理事会や経済指標で市場が動き出せば収益機会となり得る。

    また、ECBと米連邦準備制度理事会(FRB)の金利差拡大にも注意が必要だ。米国ではインフレが粘着的でFRBが引き締め姿勢(タカ派:利下げに慎重)を保つ一方、ユーロ圏のインフレ指標は鈍化し、市場では夏の終わり頃までにECBが利下げする確率を高めて織り込みつつある。こうした金融政策の違いはユーロの逆風であり、弱気から中立の見通しを補強する。

    2025年に進んだ防衛支出や貯蓄・投資同盟の取り組みだけでは、分断された資本市場の停滞感を覆せていない。欧州の主要国が昨年求めた、資本市場同盟の深化に向けた実質的な政治合意はいまも待たれている。合意が実現するまでは、ユーロの上昇局面は売り場と見なされやすい。

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