グリアー氏は、米国の狙いは国内の目的を達成するため、中国との経済関係を「管理・コントロール」することだと述べた。ホルムズ海峡の開放維持は中国にとって極めて重要だとし、対イラン関与について米国は「現実的(実利的)」と見ているとも語った。
同氏は、中国が大豆購入の約束を履行していると説明した。米国はレアアース(希土類。スマホやEVなどに使う特殊な金属素材)を巡る争いの解消を目指しており、最近数週間で中国産イットリウム(希土類の一種。電子部品や特殊材料に使われる)の米国向け出荷が到着したという。
Trade Talks Signal Management Not Escalation
グリアー氏は、中国が「米国が中国製品に一定の関税を課す」ことを受け入れていると述べた一方、具体的な税率は示せないとした。米国は中国との「買う・売る」の優先順位を定めたい考えで、中国による買収は主権的(=その国が自ら決める)選択だとも述べた。
同氏は、中国が米国のAI向けチップ(人工知能の計算に使う半導体)での優位を、国内製造業へのリスクと見なす可能性があると指摘した。半導体の輸出規制(特定の先端製品を海外へ出せないようにする仕組み)については議論しておらず、協議の主要テーマでもないとした。
同氏は、サプライチェーン(部品・原材料の調達から生産、物流までの供給網)が中国から外へ移るのを抑える中国の規則を懸念材料として挙げた。台湾問題が通商協議に影響する可能性は低いとも述べた。
AUD/USDは0.12%安の0.7212。貿易戦争とは、関税などの貿易障壁が引き上げられ、報復措置を招き、輸入コストや生活費を押し上げ得る状態を指す。
Market Implications Across FX Rates Commodities And Volatility
米中の貿易対立は2018年に始まり、2020年1月に「第1段階合意(Phase One deal。米中が一部の関税や購入を巡り合意した枠組み)」に至った。トランプ氏は2024年選挙戦で公約したのち、2025年1月20日に対中関税60%を導入した。
足元の発言は、強硬な関税政策と、協議を続ける現実的な運用との間に温度差があることを示す。注目すべきは基調で、エスカレーション(対立激化)ではなく管理を志向しているように見える。市場が交渉実態以上の対立を織り込んでいる可能性があり、ボラティリティ(価格変動の大きさ)を売る戦略(オプションなどで変動拡大を見込まない取引)が選択肢になり得る。
為替では、豪ドル安は見出しリスクを反映しているが、貿易摩擦の実勢を映しやすい指標はオフショア人民元(CNH。中国本土外で取引される人民元)だ。CNHは2025年の関税60%導入以降弱含んでいるものの、今回の協議はUSD/CNH(ドル/オフショア人民元)の上値を抑える要因になり得る。2019年に7.00を初めて突破した際のような急伸とは異なり、人民元の安定が一時的な「休戦」のサインとなるかを見極めたい。
商品では、中国が大豆購入を履行している確認は、農産物先物(将来の売買を約束する取引)の下値を支えやすい。大豆のショート(値下がりを見込む売り持ち)はリスクが高まる。同様に、レアアース問題を冷静に扱う意向は、過去の緊張局面で見られたイットリウムなど素材価格の極端な変動が、当面は起きにくいことを示唆する。
市場の恐怖指数と呼ばれるVIX(S&P500の予想変動率を基にした不安心理の指標)は、高関税環境を織り込みつつあり、2025年初の急騰後は足元で18前後で推移している。より穏当な議論が続くなら、S&P500など株価指数のインプライド・ボラティリティ(オプション価格から逆算される予想変動率)が高すぎる可能性がある。オプションのプレミアム(価格)を売る取引で、大きな激化が当面ないことに賭ける機会となり得る。
半導体輸出規制が主要テーマではないとの報道は大きい。2022〜2024年の政策運用とは対照的で、半導体セクターにとって重要な不確実性が後退する。とりわけ中国市場への依存度が高いSOX指数(半導体関連株指数)など、ハイテク株の安心感につながる可能性がある。
また、ホルムズ海峡への言及は、エネルギーが通商力学と結びついていることを示す。中国はこのチョークポイント(海上輸送の要所)を通る原油輸入への依存が高く、米国に交渉上の影響力を与え得る。WTIやブレントのオプション(価格変動に備える権利取引)で不自然な動きが出ないか注視したい。急騰が起きれば、新たな圧力がかけられている兆候になり得る。