米国の小売売上高(コントロール・グループ)は4月に前月比0.5%増となった。
前月の伸びは0.7%増だった。
小売支出の減速
消費支出の伸びが0.7%から0.5%へ鈍化したことは、米連邦準備制度理事会(FRB)のこれまでの利上げ(政策金利の引き上げ)が、なお景気に影響を与え続けていることを示す。これは、消費者が慎重になりつつある一方で、急減速しているわけではないことの確認材料だ。この指標だけで景気後退(リセッション)の兆候と断定するのではなく、景気の「過熱が落ち着く」方向への動きとみるべきだ。
今回の内容は、直近のほかの指標が示す景気の冷え込みとも整合的だ。例えば最新のCPI(消費者物価指数)では、コアインフレ(食品・エネルギーを除いた物価上昇率)が3.2%まで低下し、2024年後半以来の低水準となった。また新規失業保険申請件数(失業者が初めて給付を申請した件数)もやや増え、4週移動平均(短期のぶれをならす平均)は22万5,000件となっている。これらを踏まえると、FRBは夏場にかけて政策金利を据え置く(変更しない)可能性が高い。
金利市場の取引(政策金利や国債利回りの動きを材料に売買すること)では、2025年の大半を特徴づけた引き締め局面(利上げ中心の局面)が終わったとの見方を補強する。金利が横ばい、または低下した場合に利益になりやすいポジションの検討余地がある。例えば、米国債先物(国債を将来の価格で売買する契約)に連動するコールオプション(将来、決められた価格で買う権利)だ。年末までの利下げ(政策金利の引き下げ)確率は上がりやすい。
株式市場では、「悪材料が好材料」と受け止められやすく、追加利上げの警戒が弱まることで短期的に支えとなる可能性がある。ただし、景気減速が企業収益を押し下げる影響と、金利低下が株価の理論価値(割引率低下による株価の押し上げ)に与える影響のどちらが勝るかを市場が判断しかね、値動きの大きさ(ボラティリティ)が上がりやすい。VIX(株式市場の予想変動率を示す指数)コールオプション(VIXが上がった場合に利益になりやすい)の6月満期は、不確実性への備え(ヘッジ)として低コストになり得る。
セクターと通貨への影響
今回の内容は、業種(セクター)を絞った戦略を考えやすい。支出の鈍化は一般に、消費関連のうち裁量的支出(景気次第で増減しやすい買い物)に依存する銘柄に影響が出やすい。消費者裁量セクターETFのXLYなどで、プットオプション(将来、決められた価格で売る権利)を買う戦略が選択肢となる。これは2025年後半にみられた類似の消費減速局面でも有効だった。
また、FRBがよりハト派(利上げに慎重、利下げに前向き)に傾く見通しは、米ドル安につながりやすい。特に欧州中央銀行(ECB)がタカ派(利上げに前向き、引き締め重視)の姿勢を示し続けるなら、ドルの弱さが目立ちやすい。ドル指数(DXY、主要通貨に対するドルの強さを示す指数)は年初来安値を試す可能性がある。ドル安に賭ける手段としては、ドル連動ETFのUUPのプットオプション買いなどのデリバティブ(先物・オプションなどの派生商品)戦略が相対的に魅力的になっている。