英国の2026年1〜3月期(速報値)の国内総生産(GDP、国内で生み出されたモノやサービスの合計)は、前期比0.6%増となり、2025年10〜12月期の0.1%増から加速した。市場予想の0.6%増と一致した。
実質GDPは前年比1.1%増。市場予想の0.8%増を上回り、前期の1.0%増から小幅に伸びた。月次GDP(1か月ごとの経済活動の変化)は3月に前月比0.3%増となり、2月の0.4%増(0.5%増から下方修正)に続いた。市場は0.2%減を見込んでいた。
成長データは市場予想を上回る
3月の鉱工業生産(工場や鉱山、電力などの生産活動を示す指標)は前月比0.2%減。一方、製造業生産(鉱工業のうち製造業に限った生産指標)は同1.2%増となった。いずれも市場予想より良好だった。
発表後、英ポンド/米ドル(GBP/USD)は1.3520付近で0.01%安。GDPの発表時刻はGMT(グリニッジ標準時)06:00。
発表前の市場予想は、1〜3月期GDPが前期比0.6%増、3月の月次GDPが前月比0.2%減だった。製造業生産は2月の0.1%減に続き0.2%減、鉱工業生産は2月の0.5%増の後に0.4%減と予想されていた。
イングランド銀行(英中銀)は4月30日、政策金利(銀行が短期資金をやり取りする際の基準となる金利)である銀行金利を3.75%に据え置いた。0.25ポイント(0.25%)の利上げを支持した票が1票あった。英国の3月のインフレ率(物価の上昇率)は前年比3.3%で、5月7日に地方選挙が実施された。
市場の反応は限定的
1〜3月期のGDPが前期比0.6%増でも英ポンドが上昇しない点は重要だ。GBP/USDが1.3520付近で横ばいのままということは、市場が過去の統計より先行きのリスクを重視していることを示す。好材料に反応しない動きは重要なシグナルとなる。
主な材料は、イランで続く戦争と、5月7日の地方選後の政治の不安定さだ。投資家は英国資産を持つための上乗せ利回り(リスクに見合う追加の見返り)を求めており、英国10年国債(ギルト)とドイツ10年国債(ブント)の利回り差(スプレッド)はこの1週間で5ベーシスポイント(bp、金利の単位で0.01%)超広がった。政治・地政学リスクが、経済指標の改善を上回って意識されている。
こうした状況は英中銀の次回会合を難しくする。3月のインフレ率は前年比3.3%で、通常なら金融引き締め寄り(タカ派、利上げに前向き)になりやすい。しかし、対立激化と国内の不透明感は、年後半の景気減速リスクを高める。市場で将来のインフレを織り込むインフレスワップ(将来の物価上昇率を取引する金融商品)では、今後2年の英国インフレが3%を超えて高止まりすると見られており、英中銀が景気を下支えする余地は限られる。
この前提では、向こう数週間は英ポンド安を想定した戦略が有利になりやすい。1.3650の上値抵抗線(レジスタンス、上昇しづらい水準)を上抜けられない以上、下方向に動きやすい。1.3450の重要な下値支持線(サポート、下げ止まりやすい水準)への下落に備え、プットオプション(将来、あらかじめ決めた価格で売る権利)を買って下落リスクに備える、または下落局面で利益を狙う選択肢がある。