英国の非EU貿易収支は3月に悪化した。前期の▲70.97億ポンドから▲151.95億ポンドへ拡大した。
つまり、非EU諸国との輸出(海外に売る)と輸入(海外から買う)の差が広がった。3月は赤字(輸入超過)が一段と大きい。
ポンドへの影響
非EU貿易赤字が152億ポンドまで急拡大したことは、英ポンドにとって明確に弱材料(下落要因)だ。これは、英国の統計機関である英国国家統計局(ONS)が、燃料や機械(産業用設備など)の輸入増が主因だと説明している。赤字拡大は、輸入代金の支払いでポンドが売られやすくなる(外為市場でポンドの売りが増える)ことを意味する。GBP/USD(英ポンド/米ドル)は、すでに直近1か月で2%下落して1.2250近辺で推移しており、さらなる下押し圧力が警戒される。
今後数週間は、ポンド安を見込む取引が増えやすい。例えば、GBP/USDのプットオプション(下落したときに利益を狙える権利)を買い、現値より低い行使価格(権利を行使するレート)に設定して、2025年後半に意識された1.20の下値支持線(下げ止まりやすい価格帯)への下落に備える方法がある。より直接的には、ポンド先物をショート(売り持ち)して下落局面の利益を狙う戦略も考えられる。
この貿易統計が重いのは、4月のインフレ率が予想外に2.8%へ上昇し、低下傾向が反転した直後だからだ。貿易赤字の拡大は、通貨安を通じて輸入品の円建てならぬポンド建て価格を押し上げ、物価上昇圧力を強めやすい。これにより、イングランド銀行(BOE、英中央銀行)は6月会合を前に判断が難しくなり、市場が見込んでいた利下げの可能性は低下しやすい。
市場は、夏の利下げ観測をさらに後退させる(織り込みを外す)可能性がある。通貨安とインフレの粘着は、金融引き締め寄りの姿勢(タカ派=利下げに慎重)を維持させやすい。短期金利の見通しに連動しやすいSONIA先物(英ポンド翌日物金利を基準にした金利先物)を使い、「金利が想定より高止まりする」方向に賭ける取引も選択肢になる。
株式市場への影響
一方で、ポンド安はFTSE100(英国主要株価指数)には追い風になり得る。指数を構成する大手企業の多くは売上の多くを米ドルで得ており、ポンド安になると、海外収益をポンドに換算した金額が増えるためだ。この関係は2023年の通貨安局面でも見られ、FTSE100は相対的に底堅かった。指数のコールオプション(上昇したときに利益を狙える権利)を検討する余地がある。