EU ETS改革で無償排出枠が絞り込まれ、コスト増と欧州アルミ生産者への圧力が強まる

    by VT Markets
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    May 13, 2026

    EU ETS I(EU排出量取引制度の第1制度)の変更案には、市場安定化準備金(排出枠の需給を調整する仕組み)の見直し、脱炭素基金(排出削減投資を支援する資金枠)の構想、無償配分される排出枠(排出量を相殺するための「許可証」)の基準値(ベンチマーク:業界ごとの標準的な排出原単位)を算定する新方式が含まれる。

    代替ベンチマーク値(データ不足などで通常のベンチマークが使えない場合に適用する基準値)は、2021~2025年比で2026~2030年に34%引き下げられる見通しだ。この引き下げにより、欧州のアルミ再生事業者や精錬・製錬関連の事業者は、必要な排出枠をより多く市場で購入する必要が出る。

    順守コスト(制度要件を満たすための費用)が上昇すれば利益率が悪化し得る。アルミ価格は世界市場で決まるため、追加コストを販売価格に転嫁しにくいからだ。欧州アルミニウム協会(European Aluminium)は、これにより欧州のアルミリサイクルの競争力が弱まる恐れがあると警告している。

    2026~2030年を対象とするEU排出量取引制度改革が実施段階に入り、欧州のアルミ生産者には強い圧力がかかっている。無償の炭素排出枠(排出に必要な許可証)が大幅に削減され、企業は排出をカバーするため追加の許可証購入を迫られる。これはEU域外の競合が負担しないコストであり、欧州企業の運営費を直接押し上げる。

    この圧力はすでに炭素市場に表れている。EU排出枠(EUA)先物(将来の価格で売買する契約)は直近取引で1トン当たり92ユーロを上回り、数カ月ぶりの高値となった。各産業が年内に必要な許可証の確保を進めたためだ。こうしたコスト上昇は、アルミ価格が世界で決まる以上、欧州の精錬側が容易に販売価格へ上乗せできない。

    デリバティブ(金融派生商品)取引の観点では、地域による差が明確になる。欧州アルミ関連企業は、世界の同業他社に比べて株価が弱含む可能性があり、欧州の工業株が商品指数(コモディティ指数:複数商品の価格動向を示す指数)に対して出遅れる局面を利用する取引が検討対象になる。

    ロンドン金属取引所(LME)のアルミ価格は1トン当たり2,550ドル近辺で推移しており、主因は世界の需給で、欧州特有の制度コストではない。このため、足元の負担は生産者の利益率で吸収されやすく、今後数四半期は決算の下振れに対して株価が反応しやすい状況になり得る。

    2025年を振り返ると、ノルスク・ハイドロのような影響を受けやすい企業の株価は、ベンチマーク改革が議論される局面で変動が目立った。いま制度が実施に移ったことで、市場はこのコスト圧力をより長期のものとして織り込みやすい。無償配分34%削減は具体的な数字であり、将来利益の試算に組み込みやすい。

    したがって、市場参加者は影響が大きい欧州アルミ企業のプットオプション(一定価格で売る権利)や、炭素排出枠のカレンダースプレッド(限月の違いによる価格差を取る取引)の検討が必要になる。EUA需要は底堅い一方、欧州生産者の収益性は低下しやすいという見立てだ。コストが上がる一方で製品価格が上がりにくいという構図が主要テーマとなる。

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