イランのアッバス・アラグチ外相は金曜日、欧州市場の取引時間中に、米海軍がイランのタンカー2隻に関与した行動についてテヘランは非難すると述べた。イラン国営メディアとロイターによると、同氏はこれを攻撃的な行為であり、停戦(戦闘を一時的に止める合意)違反だと表現した。
同氏は、外交的な解決策が示されても米国は軍事行動を選ぶと主張。さらに、イランは圧力には屈しないと述べた。
市場は地政学リスクの兆候を依然として軽視
アラグチ氏は、2月28日と比べてイランのミサイル在庫と発射装置の能力が75%だという主張を否定し、正しい数字は120%だと述べた。
ただ、市場は同氏の発言に目立った反応を示さず、世界的な投資家心理(リスクを取りに行くか、守りに入るか)の変化も明確ではなかった。
市場はこれらの発言を単なる政治的な雑音として扱っている。しかし、タンカーへの直接的な脅威を踏まえると、地政学リスク(政治・安全保障の緊張が市場に与えるリスク)の見積もりが甘い可能性がある。米海軍が実際に追加行動に出れば、短期間で深刻な緊張激化につながり得る。
最も差し迫ったリスクは原油供給だ。世界の1日当たりの石油消費量の約21%がホルムズ海峡を通過するためである。供給不安が高まった2022年初頭には、ブレント原油先物(北海ブレントを指標とする原油の先物取引)が数週間で30%超上昇した。今回の状況は、より直接的になり得る。今後数週間を対象に、ブレントやWTIの「アウト・オブ・ザ・マネー」のコールオプション(現時点の価格より高い権利行使価格で買う権利。価格急騰時に利益を狙い、支払った代金以上の損失は原則として限定される)を買うことは、供給ショックに備える方法になり得る。
資産横断の波及とポートフォリオのヘッジ
緊張が高まれば、影響は原油市場だけにとどまらない。昨年の紅海での海上輸送の混乱は、CBOEボラティリティ指数(VIX、S&P500の予想変動率を示す「恐怖指数」)の短期的な上昇を招き、世界株に下押し圧力を与えた。株式の買い持ち(ロング)中心の運用では、VIXのコールオプションや株価指数のプット(下落時に利益を得やすいオプション)によるヘッジは、実際の大きな事件が起きた後よりも、足元の方が費用が小さくなりやすい。
ミサイル能力が120%という主張は、単なる強がりではなく、意図と能力のシグナルとして受け止めるべきだ。報復に踏み切るハードルが低い可能性を示し、想定以上に早く事態が悪化するリスクがある。結果として、S&P500のような主要株価指数への下落対策(保険)を比較的低コストで用意できる局面は注目される。
この環境では、緊張が深まれば資金は安全資産(相対的に値下がりしにくいと見なされる資産)へ向かいやすい。米ドル高や金価格の急伸が起こり得るため、米ドル指数(複数通貨に対するドルの強さを示す指数)のデリバティブ(先物・オプションなど、値動きに連動する取引)や金先物は、中東情勢の不安定化に備えるヘッジ手段となり得る。