メキシコの4月のインフレ率(前年同月比)は4.45%となり、市場予想の4.5%を下回った。
4月のインフレ率が4.45%と、当社予想の4.5%をわずかに下回ったことで、メキシコ中央銀行(Banxico)が「タカ派(利下げに慎重で、高金利を維持しやすい姿勢)」を維持する必要性はやや低下した。これにより、中銀は「段階的な利下げ(小幅な利下げを続ける運用)」を進めやすいとの見方が強まる。金利デリバティブ(将来の金利変動に連動する金融派生商品)市場では、短期的な金融政策の見通しが立てやすくなりつつある。
2025年を振り返ると、「コアインフレ(食品・エネルギーなど値動きが大きい品目を除いた基調的な物価)」が想定以上に粘着的だったため、Banxicoは緩和(利下げ)を一時停止し、翌日物政策金利(金融機関が短期で資金を貸し借りする際の基準となる政策金利)を9.75%で2会合連続据え置いた。しかし今回のデータは、6月会合での0.25%ポイント(25bp、bp=ベーシスポイント=0.01%)利下げの可能性を高める。金利見通しが低下方向に傾くなら、TIIEスワップ(メキシコの指標金利TIIEに連動する金利スワップ)で「固定金利を受け取る(固定受け=将来の金利低下で利益が出やすいポジション)」戦略が有利になり得る。利回り曲線(満期ごとの金利水準を示すカーブ)がさらに低下する展開を見込む投資家にとって検討余地がある。
メキシコペソ(MXN)の動きも重要だ。米ドルとの金利差が縮小する局面では、ペソの支援材料が弱まりやすい。直近の米国のコアPCE(個人消費支出物価指数のうち変動の大きい項目を除いた指標)が2.8%と粘着的で、米連邦準備制度理事会(FRB)が近く利下げに動く可能性は高くない。両国の政策方向の違いはMXNの重しとなり得るため、USD/MXNの先物予約(フォワード、将来の為替レートをあらかじめ固定する取引)やコールオプション(将来、決められたレートで買う権利)でドル高・ペソ安方向に備える戦略が、今後数週間の選択肢となる。
今回のインフレ下振れは、年初に上昇していた為替の変動率を抑える方向にも働き得る。USD/MXNの1カ月物オプションのインプライド・ボラティリティ(市場が織り込む将来の想定変動率)は、3月の高水準から10.2%へ低下している。ペソが一定の範囲内で推移するとみる投資家にとっては、オプション・プレミアム(オプションの価格)を売る戦略が相対的に取りやすい環境になりつつある。例えば、リスクリバーサル(コールとプットを組み合わせて方向性を取る取引)やプットスプレッド(権利行使価格の異なるプットを組み合わせ、下落リスクとコストを調整する取引)が候補となる。