NZドル(NZD)は木曜日、米ドル(USD)に対して2カ月ぶり高値となる0.5983まで上昇し、3日続伸した。米国とイランの和平合意に進展があるとの報道や原油安を受け、USD買いが一服した。
報道によると、テヘランは米国が提示した14項目の計画を検討している。ドナルド・トランプ氏はイランと「非常に良い協議」を行ったと述べ、近く合意に至る可能性を示唆した。
Oil Prices And Risk Appetite
アル・ハダスはXで、ホルムズ海峡の再開に向けた連絡が進んでいると報じた。WTI(米国産原油の代表的な指標)は90ドル台前半で推移し、ブレント(北海産原油の国際指標)は100ドルを下回った。ニュージーランドは原油を輸入しているため、原油安はNZDの支援材料になりやすい。
今週序盤のニュージーランド統計では、失業率が1-3月期(Q1)に低下したが、市場の反応は限定的だった。米国ではADP(民間雇用者数の推計)で4月の雇用増が市場予想を上回り、金曜日のNFP(米国の重要な雇用統計)を前に、週次の新規失業保険申請件数やFRB(米連邦準備制度理事会)高官の発言が控える。
NZDはニュージーランドの景気やRBNZ(ニュージーランド準備銀行)の金融政策に加え、中国の需要、乳製品価格の影響を受けやすい。RBNZはインフレ率(物価上昇率)の目標を1%〜3%(中心は2%付近)としており、米国との金利差(政策金利の差)もNZD/USDに影響する。
NZDは市場がリスクを取りやすい局面(リスク選好)で上がりやすく、不透明感が強い局面では下がりやすい傾向がある。
Rate Differentials And Carry
NZD(キウイ)は底堅さを保っている。2025年に観測された「米国・イラン合意期待が主因」という構図とは異なり、足元ではWTIが1バレル82ドル前後と当時の90ドル超より低い水準で安定している。これにより、安全資産としてのUSD買い圧力が弱まり、NZDのような資源国通貨(一次産品の影響を受けやすい通貨)に追い風となっている。
金利差は小幅ながらNZDに有利だ。RBNZは根強いインフレに対応するため政策金利(オフィシャル・キャッシュ・レート)を5.50%に据え置いている。インフレ率は直近で3.8%とされる。これに対し、FRBは景気や物価への配慮から利上げに慎重(ハト派的=金融引き締めに消極的)な姿勢が意識され、NZDはキャリートレード(金利の高い通貨を買い、低い通貨を売って金利差収益を狙う取引)の対象として選好されやすい。デリバティブ(先物・オプションなど価格変動リスクを売買する金融商品)市場では、RBNZがFRBより長く引き締め姿勢(タカ派=金融引き締めに積極的)を維持するシナリオを織り込む形で、オプション(将来、あらかじめ決めた条件で売買できる権利)の価格形成が進む可能性がある。
ただし、国内要因には注意が必要だ。長期の金融引き締めを経て、景気に減速の兆しが出ている。ニュージーランド統計局(Stats NZ)の最新データでは、2026年1-3月期の失業率が4.3%へ小幅上昇した。成長が鈍化するなら、NZDの上値余地は限定されうる。
対外要因では、中国経済の持ち直しが引き続き重要だ。PMI(購買担当者景気指数、企業の景況感を示す指標)が50(景気の拡大・縮小の分岐点)をわずかに上回る水準にとどまり、強い回復というより脆弱な回復を示す。プラス材料としては、GDT(世界の乳製品の国際入札)で価格が1.5%上昇し、NZDを一定程度支える。中国からの弱い指標の急変に備え、オプションでヘッジ(損失を抑えるための保険的取引)を行うのが有効になり得る。
リスク心理は2025年の中東緊張局面より均衡しており、VIX指数(米国株の予想変動率で、市場の不安の目安)は足元で18近辺にある。この環境では、金利面の支援はある一方、国内景気と中国要因が上値を抑えやすい。NZD/USDでは、コールスプレッド(上昇に賭けつつ、上値の利益と支払うコストを抑えるオプション戦略)で小幅な上昇を狙い、上抜けに失敗した場合のリスクを限定する戦略が選択肢となる。