インドルピーは木曜日、対米ドルで序盤の下落から一転して上昇に転じ、USD/INRはおよそ94.15まで下落した。背景には、世界のエネルギー供給の約20%に関わる主要航路ホルムズ海峡が近く再開する可能性があるとの報道を受け、原油価格が下落したことがある。
WTI原油(米国産の代表的な原油指標)は約3%下落し、1バレル90.00ドル近辺。アル・ハダスはXで、米国とイランの間で海峡を段階的に再開するための協議が進んでいると報じ、同海域で足止めされている船舶は数時間以内に影響を受ける可能性があるとした。
原油安がルピー高を後押し
海外機関投資家(FII=外国の大口投資家)は5月のインド株で売り越しを継続し、月初3営業日のうち2営業日で売り越した。売り越し額は合計6,620.86億ルピー。
米ドル指数(主要通貨に対するドルの強さを示す指数)は0.12%安の97.90近辺で推移し、水曜日に付けた2カ月超ぶり低水準97.62に近い。市場は金曜日に公表される米雇用統計(非農業部門雇用者数=農業以外の雇用増減を示す重要指標、4月分)を注視しており、市場予想は増加数6万人。
USD/INRは20日指数平滑移動平均(EMA=直近の価格に比重を置いた移動平均)の94.17近辺で、短期の方向感は定まりにくい。相対力指数(RSI=買われ過ぎ・売られ過ぎの目安となる指標)は52.60付近まで低下し、下値は93ルピー台、上値は95.53が意識されている。
ホルムズ海峡再開への期待で原油が1バレル90ドル近辺まで下げたことが、ルピーの短期的な支えとなっている。エネルギーコストの低下はインドの輸入負担(輸入代金の増減)を直接的に軽くし、通貨には追い風となりやすい。このため短期的にはUSD/INRを押し下げる可能性がある。
注目水準と目先の売買ポイント
同様の動きは過去にも見られ、例えば2022年の原油高局面ではルピーに強い下押し圧力がかかった。2026年初のデータでは、インドの製造業PMI(購買担当者景気指数=企業の景況感を示す指標)が58を上回る水準で堅調を保ち、安定したエネルギー輸入に支えられる強い経済活動を示している。インドが輸入する原油の平均価格(インド・バスケット)が直近平均の1バレル89ドルを下回る下落が続けば、この前向きなシグナルを補強する材料となる。
USD/INRは現在、94.17近辺の重要なテクニカル水準(チャート上の節目)を試している。今後の取引でこの下支えを明確に割り込めば、93ルピー台への一段安につながる可能性がある。直近のルピー安トレンドがいったん止まる合図になり得るため、この水準は要警戒だ。
一方で、FIIの継続的な売り越しは無視できない。今月だけで6,600億ルピー超の株式を売却している。2022年にはインド株を約300億ドル売り越し、他の材料があってもルピーが弱含みやすい局面が続いた。海外投資家の資金流入が鈍い状況は、ルピーの基調が弱いことを示唆する。
米ドルの弱さも要因の一つで、ドル指数は2カ月ぶり低水準近辺で推移している。米雇用統計が市場予想通り6万人増にとどまれば、ドル安が進み、ルピーの短期的な追い風となる可能性がある。より長い目線を固める前に、金曜日のデータが重要な判断材料になる。