インド準備銀行(RBI)が、ルピーを下支えし国際収支(対外取引や資金の出入りの差)ギャップを縮小するため、米ドル資金の流入を増やす手段を検討していると報じられている。検討案の一つは、国有銀行が外貨建て債券(米ドルなど外貨で発行する債券)を発行することだ。これは約30年ぶりの手法となる。
これらの債券には、参加する金融機関が為替変動リスク(通貨の値動きによる損失の可能性)を抑えるためのスワップ取引(将来の為替レートや金利の条件を交換してリスクを調整する取引)を組み込む可能性がある。スワップの条件(価格)は、過去より米金利が高い現状を反映する必要がある。2013年の「テーパー・タントラム」(米金融緩和縮小観測で新興国市場が動揺した局面)当時よりコストが増え、RBIによる支援(補助)の負担が大きくなる可能性がある。
ルピー高は一時的となる可能性
ルピーは、海外要因と国内要因によって短期間は強含む可能性がある。ただし、資金流入(海外投資資金などの流入)が改善しない限り、上昇が長く続く展開は見込みにくい。
RBIが米ドルを呼び込むために動く可能性を示唆している。ルピーは対ドルで1ドル=85.50前後まで下落し、年初来で約3%安となっている。支援策が正式に発表されれば、短期的にルピーの押し上げ材料になり得る。
デリバティブ(先物・オプションなどの金融派生商品)取引の観点では、RBIが実際に動いた局面で短期のルピー高を狙う余地がある。国有銀行による外貨建て債券発行が伝われば、USD/INR(米ドル/インドルピー)が短期的に低下(ルピー高)する可能性がある。短期のINRコールオプション(一定価格でルピーを買う権利)や、USD/INR先物(将来の売買価格をあらかじめ決める取引)を売る戦略が候補となる。
ただし、根本問題は資本フロー(海外投資家の資金の出入り)の弱さだ。海外の株・債券投資を行う投資家(外国ポートフォリオ投資家)が前四半期にインド市場から40億ドル超を引き揚げた。2013年のテーパー・タントラム時も、同様の債券発行は市場の不安を和らげたが、単独で持続的な回復を作ったわけではない。必要なのは、インド資産に対する投資意欲の広い改善だ。
ボラティリティ戦略が適合しやすい
介入コストは、2013年や2018年といった過去局面より現在の方が高い。米連邦準備制度理事会(FRB)が高金利が2026年末まで続く可能性を示すなか、これらの債券のリスクをヘッジするためのスワップ取引はRBIにとって高コストになりやすい。長期かつ大規模な支援策は実施しにくく、ルピー高は一時的になりやすいとの見方を補強する。
新たな措置の時期や効果が読みにくい以上、ルピーのインプライド・ボラティリティ(オプション価格から逆算される市場の予想変動率)の上昇が見込まれる。方向を当てに行くより、値動きの拡大で収益を狙う戦略が相対的に有利になり得る。USD/INRストラドル(同じ期限・同じ行使価格のコールとプットを同時に買い、上下どちらの大きな動きでも利益を狙う)やストラングル(行使価格の異なるコールとプットを買い、より大きな変動を狙う)の検討余地がある。