WTI原油は木曜日、3日続落し、90.66ドルで取引された。米国とイランの和平協議に関する報道や、ホルムズ海峡の再開を巡る見方が材料となった。
アル・ハダス(Al-Hadath)はXで、協議に近い関係者の話として、海峡を段階的に再開するための集中的な協議が進んでいると伝えた。ホルムズ海峡は、世界の石油供給の約20%が通過する重要な航路(チョークポイント=海上交通が集中し、封鎖されると供給に大きな影響が出る狭い水路)だ。
和平協議からのサイン
報道によれば、テヘランは戦争を正式に終結させる米国の最新提案を検討している。ロイターが引用した関係者は、同提案には核協議の枠組み、ホルムズ海峡の再開、米国の対イラン制裁の解除も含まれるとしている。
WTIは先週の高値から約17ドル下落した。それでも戦前水準を約40%上回っており、ホルムズ海峡の今後がなお不透明であることを示している。
市場参加者は、航路再開について明確なサインを待っている。実現すれば、原油・天然ガス価格は戦前水準に近づく可能性がある。
昨年後半には、米イラン和平協議の進展が表面化した局面で原油価格が急落した。WTI市場は107ドル超でいったん天井を打ち、ホルムズ海峡再開の憶測が出た当初、90ドル前後まで下落した。この動きは、緊張緩和(デエスカレーション=対立の強度が下がること)への期待が主因だった。
合意後の市場の値付け
ホルムズ合意が成立した現在、市場は供給増という新しい状況を織り込む形で価格を見直した。イランの輸出は2月以降、日量約90万バレル増加している。足元のWTIが78ドル前後で安定するなか、主要な地政学リスク・プレミアム(供給途絶の懸念を価格に上乗せする分)は消えた。海峡の船舶通航データも戦前の95%まで戻っており、この重要航路の正常化が確認される。
デリバティブ(金融派生商品=原油先物やオプションなど、原資産の価格に連動する取引)を扱う市場参加者にとっては、2025年後半に見られた高い「インプライド・ボラティリティ(IV=オプション価格から逆算される将来の値動き見込み)」の局面は概ね過去のものとなった。原油ETFでのカバードコール(保有しながらコールオプションを売ってプレミアム=受取代金を得る手法)やショート・ストラングル(同一満期でコールとプットを同時に売る戦略)など、プレミアムを売る運用のほうが、高い保険(ヘッジ)を買うより魅力が増している。原油のボラティリティ指数(OVX=原油オプションから算出される予想変動率指標)も、紛争期の55近辺から30台前半へ低下している。
焦点は、地政学の見出しからOPEC+(石油輸出国機構OPECと主要産油国の協調枠組み)による供給管理へ移る。新たなイラン産の供給増に対応し、OPEC+は4月会合で自主減産(各国が任意で行う生産抑制)の延長を決定し、市場の下値を支えた。カレンダー・スプレッド(期近と期先の先物価格差を売買する取引)で、将来の需給引き締まり期待を狙う戦略が今後数カ月の選択肢となり得る。
今後は、和平による下振れリスクはすでに織り込まれた一方、世界需要には不透明感が残る。中国の製造業PMI(購買担当者景気指数=企業の受注や生産見通しを基に景況感を示す指標)の弱さは、消費の重しとなる可能性を示す。追加の値動きは、地域紛争よりも、こうしたマクロ要因(景気・金利・為替など広範な経済要因)に左右されやすい。