トランプ米大統領は5月14〜15日に中国を訪問するとみられる。両国は関係を安定させ、昨年10月に合意した「関税休戦」(追加関税の応酬をいったん止める取り決め)を維持する姿勢を示している。
焦点は、既存の休戦を崩さずに維持しつつ、利害が一致する分野で追加の譲歩(条件の引き下げや購入拡大など)を引き出せるかにある。短期的な成果は、全面的な関係再構築ではなく、政治的に敏感でない貿易分野に限られるとの見方が強い。
Trip Framing And Risk Containment
記事は、足元の報道は訪問前の駆け引き(交渉を有利にするための発言や情報発信)と位置づけている。今回の訪中は、関税などの貿易障壁の高止まりやサプライチェーン(供給網)の混乱が続くなかで、対立の再燃を避ける効果があり得るという。
準備は実務優先で、取引条件の調整が中心とされる。3月のパリ会合は貿易が主題だったと報じられ、昨年の釜山での休戦がモデルになり得ると示唆している。
想定される措置として、特定品目の関税引き下げが挙げられる。ほかに、米国側の非関税措置(関税以外の輸出規制や認可要件など)の一部延長・緩和、中国による米国産品(農産物、エネルギー、航空機など)の購入、中国による重要鉱物(産業に不可欠な金属・鉱物資源)の供給継続が候補とされる。
2025年の釜山休戦後に安定が続いた点を踏まえると、今回は市場を大きく動かす出来事というより、現実的な関係維持に向かう可能性が高い。主目的は現状維持で、これが市場の変動(値動きの大きさ)を抑える要因になりやすい。トレーダーにとっては、大きな上放れ・下放れを狙うより、一定の値幅に収まる展開を前提とした戦略が有利になりやすい。
Index Volatility And Range Bound Setups
この環境では、貿易ニュースに反応しやすい主要株価指数で「ボラティリティを売る」(値動きの大きさが想定より小さいほど利益になりやすい取引)ことを検討したい。CBOEボラティリティ指数(VIX、S&P500の予想変動率を表す指数)は足元で14〜16程度で推移し、長期平均の19を下回る。政治面の安定が続けば、VIXは低位に抑えられやすい。この局面では、ショート・ストラングル(同じ満期のコールとプットを売り、一定の範囲内の値動きで利益を狙う)やアイアン・コンドル(複数のオプションを組み合わせ、損益を一定範囲に限定しつつレンジ相場で収益を狙う)といった指数ETFの戦略が相対的に有効になりやすい。
中国による米国産の農産物・エネルギー購入など、個別の譲歩は限定的な投資機会を生む。米国の対中大豆輸出は重要な指標で、今年はおおむね安定している。新たな購入合意が出れば、価格の下値を支えやすい。下方向のリスクが限られやすい前提では、農産物コモディティETFでプット売り(一定水準以上での推移を見込み、保険料に相当するプレミアムを得る手法)を検討しやすい。
一方で「非敏感」分野に焦点が当たるということは、高度な半導体など規制対象の分野では上値が重くなりやすいことを意味する。昨年、米国の対中貿易赤字が10年ぶり低水準となったのは、ハイテク分野への狙い撃ちの規制が一因だった。したがって、規制が厳しいハイテク銘柄でコール買い(大きな上昇で利益になるが、上昇が乏しいと損失になりやすい)に大きく賭けるのはリスクが高い。全面的な突破は見込みにくいからだ。
為替市場では、特に米ドル/人民元(USD/CNY、1ドルを何元で交換するかを示すレート)も、取引型の合意を進めるため中国が安定を志向する限り、低い変動が続きやすい。ここ数カ月、相場は狭い範囲で推移しており、静かな外交結果はこの傾向を補強し得る。人民元の大きな方向性に賭けるより、一定レンジ内での売買(レンジ取引)が選好されやすい。