WTI原油は水曜日に約92.30ドルまで下落し、当日下落率は7.62%となった。米国とイランの外交面での進展が報じられ、供給途絶への懸念が後退したことが背景にある。
Axiosは、米国とイランが、イランの核開発(核燃料を作るための技術に関する計画)をめぐる広い協議に結び付く「覚書(当事者の認識を文書化した合意のたたき台で、正式な条約より拘束力が弱い場合が多い)」に近づいていると報じた。内容として、ホルムズ海峡(中東の原油輸送の要所)の通航に関する制限を段階的に緩和すること、イランがウラン濃縮(原子力関連で用いられる濃縮度を高める工程)を一時停止すること、米国が制裁(貿易・金融などの制限措置)を緩めること、凍結されているイラン資産の解放が含まれるという。
外交の進展と供給リスク
Axiosはまた、ホワイトハウスが今後48時間以内にテヘランから回答があると見込んでいるとした。Reutersは、パキスタンの外交筋の話として、両国は合意の最終調整に「かなり近い」と報じた。
ドナルド・トランプ米大統領は、ホルムズ海峡での商船の安全確保を目的とする軍事作戦「プロジェクト・フリーダム」について、協議期間中は一時停止すると述べた。ピート・ヘグセス米国防長官は、米国とイランの停戦(戦闘の停止)は「現時点では確実に維持されている」と語った。
米エネルギー情報局(EIA)は、先週の米国の原油在庫が231.4万バレル減少したと発表した。前週は623.3万バレルの減少だった。市場予想の280万バレル減に近い結果で、ゴールドマン・サックスは世界の石油在庫が約8年ぶりの低水準に近いと指摘した。
市場への影響とポジショニング
現在、2025年に見られた在庫減少局面とは異なり、需給面の支えは乏しい。先週のEIA統計では在庫が150万バレル増加(市場予想に反する「サプライズ増」)となり、価格の重しとなった。この弱気(ベア)な供給データに加え、中国の工業需要の減速懸念が続いていることが、テクニカル面(チャート上の形状や需給心理)でも弱い地合いを作っている。
今後数週間の戦略としては、コールオプション・スプレッドの売りが妥当とみられる。オプション(将来の一定期日までに決められた価格で売買する権利)のうち、コールは「買う権利」を指す。コールスプレッド売りは、権利行使価格(ストライク)の異なるコールを組み合わせて受け取るプレミアム(オプション料)を狙い、損失を一定範囲に抑える手法である。WTIが85ドルを上回りにくい状況では、6月満期の88~90ドルのコールスプレッドを売ることで、レンジ推移や追加下落局面で収益機会が得られ、リスク(最大損失)も明確になる。
一方、情勢が急変し得る点には注意が必要だ。南シナ海の緊張再燃を踏まえると、遠い権利行使価格の安いコール(アウト・オブ・ザ・マネー=現値から離れており現時点では行使価値がない)を一部保有することはヘッジ(損失回避の保険)となる。例えば7月の95ドル・コールを買えば、現在市場が織り込んでいない突発的な供給ショックに備えられる。