銀(XAG/USD)は、米国とイランの和平合意に向けた進展が報じられたことを受け、水曜日に上昇した。XAG/USDは77ドル近辺で推移し、日中で5.50%超高となった。
米ニュースサイトAxiosは、ワシントンとテヘランが戦闘終結に向けた合意に近づき、核協議を進めるための枠組み作りを進めていると報じた。この報道を受け、米ドルと原油価格が下落した。
市場の反応とマクロ要因
原油安は、足元のインフレ(物価上昇)への警戒感を和らげ、米国債利回り(債券の利回り、金利の代表的な指標)を押し下げた。利息が付かない銀(非利回り資産)には追い風となった。市場では、年末までに米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げする見方が再び強まった。
ただ、最終合意に至るかは不透明で、上値を抑える要因になり得る。急伸後は、一定の範囲で値動きが落ち着く「もみ合い局面(コンソリデーション)」に入る可能性もある。
日足では、銀は50日・100日の単純移動平均線(SMA=一定期間の平均価格を結んだ線)を下回った。相対力指数(RSI=買われ過ぎ・売られ過ぎを示す指標)は53近辺、MACD(移動平均を使った勢いの指標)はわずかにプラス、平均方向性指数(ADX=トレンドの強さを示す指標)は12前後だった。
上値抵抗(レジスタンス)は50日SMAの77ドル近辺、次が100日SMAの80ドル近辺。下値支持(サポート)は70.00~71.00ドルのゾーンで、200日SMAは63ドルに位置する。
オプションとボラティリティ戦略
地政学ニュースをきっかけに価格が急伸し、77ドルの抵抗水準に到達したため、慎重に見る必要がある。米・イランの最終合意には不確実性が大きく、強い方向性に賭けるより、価格変動(ボラティリティ)を対象に取引する局面とみる。銀オプションのインプライド・ボラティリティ(IV=市場が織り込む将来の変動率)は6カ月ぶり高水準に上昇し、期近(最も満期が近い)で35%超となっている。これにより、オプション売り(プレミアム=オプション料を受け取る戦略)が相対的に有利になりやすい。
合意成立で一段高を想定する場合、コール・スプレッド(上昇を狙いつつ損失上限を限定する買い戦略)が選択肢となる。例えば6月限の77/80ドルのコール・スプレッドなら、次の重要な抵抗水準への上昇を狙いつつ、高いIV環境で支払うプレミアムを抑えられる。外交進展への期待で上昇した相場が、協議の停滞で急反落した過去の例もあり、注意が必要だ。
トレンドの強さを示す指標が弱く、この上昇はテクニカル面の裏付けに欠ける可能性がある。もみ合いを想定するなら、アイアン・コンドル(レンジ相場を想定し、上下の一定範囲に収まれば利益になりやすいオプションの組み合わせ)を、70ドルのサポートと80ドルのレジスタンス付近にストライク(権利行使価格)を置いて組成し、プレミアム獲得を狙う方法が考えられる。単一のヘッドラインで急変した市場が落ち着く、というテクニカル状況に沿った戦略だ。
市場は利下げ確率をより高く織り込み、CMEのFedWatchツール(先物価格から利下げ確率を推計する指標)では9月までに65%と見積もられている。一方で、インフレはなお懸念材料だ。直近の4月コアCPI(食品・エネルギーを除く消費者物価指数)は3.1%と高止まりしており、FRBが市場の想定ほど早く金融緩和(利下げなど)に動きにくい可能性がある。この現実は、利息が付かない資産の大幅な上昇を抑える要因になり得る。