4月第1週以降、米ドルは狭いレンジで推移している。米ドル指数(DXY、主要通貨に対するドルの強さを示す指数)を目安にすると、4月8日以降は毎日「98台」で引けた。
ドルの実現ボラティリティ(実際の値動きの大きさ)が低下したことで、短期のインプライド・ボラティリティ(オプション価格から逆算される将来の予想変動率)も低下している。4月の米雇用統計(非農業部門雇用者数など)が発表される前に、一部参加者は、週次のADP統計(民間雇用の推計データ)や継続失業保険申請(失業給付を継続して受け取っている人の数)を手がかりに改善を見込んでいる。
Focus Shifts From Jobs To Inflation
FRB(米連邦準備制度)の見通しは、雇用情勢よりもインフレ動向に左右されやすいとされる。利下げの織り込み(市場が金利を下げる前提で価格に反映すること)は概ね後退しており、来週のCPI(消費者物価指数、インフレを示す主要指標)のほうがFRBの政策見通しにとって重要だと整理されている。
ドルは雇用統計に向けて上方向より下方向のリスクが大きいとされる。短期の値動きは中東情勢の展開に左右され得る。
雇用統計が予想より強くてもドルを押し上げる余地は限定的とされる。これは、利下げがほぼ織り込まれなくなったことに加え、利上げ観測はインフレ指標の影響がより大きい(雇用よりインフレが材料になりやすい)ためだ。
米ドル指数(DXY)は4月を通じて、概ね104.50〜106.00の狭いレンジで推移している。こうした低ボラティリティ局面は、のちに大きな値動きにつながることがあり、ドルは下方向に傾きやすい。値動きが圧縮されている局面では、オプション戦略(権利として売買できる「オプション」を使った取引)を比較的低コストで組みやすい。
What Next For The Dollar
先週金曜(5月1日)公表の4月雇用統計は、この見方を裏付けた。新規雇用者数が予想を上回る24万人でも、ドルの上昇は限定的だった。市場の関心が雇用から離れているためだ。年内のFRB利下げはほぼ織り込まれなくなり、焦点はインフレがFRBに利上げ対応を迫るかどうかに移っている。
来週のCPIが最重要の材料になる。3月のコアCPI(食品・エネルギーを除く基調的な物価の指標)は3.7%と高止まりしており、再び高い数値が出れば、雇用指標よりもドル高材料になりやすい。逆にインフレ指標が市場予想を下回れば、ドル安圧力が強まり得る。
リスクは非対称(上振れ材料の影響は小さい一方、下振れ材料の影響は大きい可能性がある)になっている。強い統計はドルの支援材料になりにくいが、弱い統計は大きな下落を招き得る。デリバティブ(金融派生商品)取引では、DXYのプット・オプション(下落時に利益が出やすい権利)や、EUR/USDのコール・オプション(上昇時に利益が出やすい権利)で下方向に備える戦略が考えられる。足元のインプライド・ボラティリティ低下により、オプションは比較的手頃な水準になりやすい。
また地政学リスク、とりわけ中東の緊張にも注意が必要だ。情勢が大きく悪化すれば「安全資産への逃避」(リスク回避で安全とされる資産に資金が向かう動き)が起き、ドルが一時的に買われ、ドル安寄りの見立てを崩す可能性がある。こうした要因は、経済指標より優先され得る重要な変数である。