金(XAU/USD)は火曜日、月曜日に付けた約4,500ドルの5週間ぶり安値から反発し、約4,580ドルまで上昇した。ただし、金利が高止まりするとの見方が続き、中東情勢の緊張とエネルギー価格上昇による物価上昇(インフレ)懸念が背景となって、上値は重かった。
月曜日の報道では、湾岸地域で新たな攻撃があったとされ、ホルムズ海峡周辺で米国とイランの停戦(戦闘停止の合意)が揺らいでいる。イランがUAE(アラブ首長国連邦)の石油関連施設を攻撃したとの情報があり、ドナルド・トランプ米大統領は、米軍が海峡付近でイランの小型ボート7隻を撃墜したと述べた。
金利とインフレの見通し
エネルギー供給リスクが加わり、インフレ懸念は一段と強まった。インフレ率は依然として米連邦準備制度理事会(FRB)の目標である2%を上回っている。金利が高い局面では、利息を生まない金(利回りがない資産)は相対的に買われにくい。
市場では、利下げ(政策金利の引き下げ)の時期が後ろ倒しになるとの見方が強まり、利上げ(政策金利の引き上げ)の可能性も意識され始めた。CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)のFedWatch(先物価格から政策金利の確率を推計する指標)では、12月会合での利上げ確率が約27%に上昇し、1週間前のほぼゼロ近辺から大きく上がった。
米JOLTS求人件数(米労働市場の求人の多さを示す統計)は3月に686.6万件となり、2月の692.2万件から減少した。市場予想は683万件だった。ISM非製造業(サービス業)PMI(景況感指数)は4月に53.6と、3月の54.0から低下し、市場予想(53.7)をわずかに下回った。
チャートでは、XAU/USDは100日・50日単純移動平均線(SMA:一定期間の平均価格を線で示したもの)を下回る一方、200日SMAは上回って推移している。下値の目安は4,500ドル付近と、200日SMAの4,293ドル付近。上値の目安は4,766ドル、4,808ドル、5,000ドル。
取引戦略と重要水準
FRBがタカ派(インフレ抑制を重視し、利上げに前向き)姿勢を示す中、目先の金は下方向の圧力がかかりやすい。最も分かりやすい対応として、4,500ドルの下に権利行使価格(ストライク)を置いたプットオプション(価格下落で利益が出やすい権利)の購入が考えられる。金利高の見通しによる下落に備えつつ、最大損失(支払ったオプション代金)を明確にできる。
一方、ホルムズ海峡での対立再燃により、急騰の可能性が大きく、現物や先物での単純な売り(ショート)は危険になりやすい。金の予想変動率を示すGVZ(Gold Volatility Index:金のオプションから算出される「価格の揺れやすさ」)はこの1週間で15%以上上昇し、不確実性の高まりを映している。こうした局面ではロング・ストラングル(コールとプットを同時に買い、上下どちらかに大きく動けば利益を狙う戦略)が有効になりやすい。具体的には、現値から離れた権利行使価格のコール(上昇で利益)とプット(下落で利益)を両方買う。
この状況は、インフレがなかなか下がらず、FRBがタカ派路線を続けて金が買われにくかった2023年と似ている。最新のコアPCE(食品・エネルギーを除く個人消費支出物価指数:FRBが重視する基調インフレ指標)は前年比+3.1%で、2%目標を大きく上回る。市場がFRBの引き締め継続を警戒するのは自然で、このデータは「上昇局面は売りが出やすい」との見方を支える。
今週金曜日に発表される米非農業部門雇用者数(NFP:米雇用統計の中心指標)は、今後数週間の戦略を左右する重要イベントだ。2025年10-12月期は雇用の伸びが予想を上回り続けたため、今回も強い結果なら米国債利回り(米長期金利)が上昇し、金価格の重しになりやすい。雇用指標が強ければ、弱気(下落)ポジションを増やす構えだ。
また、変動率が高い局面では、オプションの売り(プレミアム=オプション代金を受け取る取引)も魅力的になりうる。具体的には、ベア・コール・スプレッド(近い権利行使価格のコールを売り、より高い権利行使価格のコールを買って損失を限定する戦略)の構築を検討し、50日移動平均線付近の約4,800ドルを目安にコールを売る。金が横ばい、または下落方向なら収益(受け取ったオプション代金)が見込め、遠い権利行使価格のコール買いが地政学リスクによる急騰への保険になる。