コメルツ銀行は、最近の英ポンド上昇は、イングランド銀行(BoE)の高い金利見通しと英国の政治リスク再燃により、いずれ勢いを失う可能性があると指摘した。今後数週間でEUR/GBP(ユーロ/ポンド)は0.89方向へ動くとみる一方、GBP/USD(ポンド/米ドル)は長期的には緩やかに上昇すると予想している。ただし、足元のポンド水準が再び見られるのは2027年になる可能性がある。
英ポンドは、戦争開始以降、プラスのパフォーマンスとなっているG10(主要10通貨)のうちの1つで、他は主に資源(商品)輸出国の通貨だ。コメルツ銀行は、これを「BoEがインフレ抑制に向けて強い対応(=政策金利の引き上げ)を行う」という期待と、3月初旬に低下した政治リスク上乗せ分(政治リスク・プレミアム)の影響と結び付けている。
英ポンド高は一時的に終わる可能性
市場の織り込み(市場参加者が金利の先行きを価格に反映させること)は、年末までに2回の利下げ予想から、場面によっては3回超の利上げ予想へと大きく変化した。コメルツ銀行は、BoEは利上げを1回行う可能性はあるものの、その後は年後半に利下げ観測が再び意識され、金利見通しの変化で押し上げられたポンド高が巻き戻る(上昇分が解消される)可能性があるとみる。
EUR/GBPは0.86近辺で推移している。コメルツ銀行は、地方選挙の結果が追加の下押し圧力になり得るとしつつ、年後半には政治リスクが和らぎ、その後ポンドは持ち直すと予想する。
2025年初めの分析を振り返ると、当時はポンド高が続くことに懐疑的だった。根拠は、BoEの金利見通しが過度に強気(利上げ方向に偏り)であること、政治リスクが一時的に低下していることだった。こうした懸念は妥当で、同じ論点が現在再び意識されている。
昨年ポンドを押し上げた、BoE見通しの大幅な見直し(=市場の金利予想の急変)は、すでに完全に解消された。2025年には、市場は利下げ予想から3回超の利上げ予想へと移ったが、これは持続しにくいと当社はみていた。予想通り、今では焦点が将来の利下げへ戻り、通貨の重しになっている。
BoEはインフレと弱い成長の板挟み
現在、EUR/GBPは0.8750近辺で取引されている。最新データでは、英国のインフレ率(物価上昇率)が2.8%と下がりにくい一方、2026年1-3月期(Q1)のGDP成長率は0.1%と低調だった。このためBoEは難しい局面にある。この景気環境では、追加利上げの可能性は低い。
当社は、BoEは当面金利を据え置くと考える。一方で市場では、弱い景気を支えるため年内に利下げが行われる可能性が徐々に織り込まれている。英国が利下げ方向に傾きやすいのに対し、欧州中央銀行(ECB)がより引き締めに前向き(タカ派=利上げや高金利維持を重視)と見られることが、ポンド安を後押しする。デリバティブ(金融派生商品)取引を行う投資家は、今後数週間でEUR/GBPが上昇する局面を狙う機会と捉えられる。
この見通しを踏まえると、投資家は権利行使価格(ストライク)0.8800近辺のEUR/GBPコールオプション(将来、一定の価格で買う権利)を検討し、当初の予想である0.8900方向への動きを狙う戦略が考えられる。コールスプレッド(コールを買い、別のコールを売ってコストを抑える手法)も、最初に払う費用(プレミアム)を下げる方法として有効だ。これにより、上昇余地を取りつつ、損失の範囲(リスク)を明確にできる。
政治の不透明感も、2025年の地方選挙前後と同様に市場に戻りつつある。現在の焦点は総選挙と、財政政策(政府の歳出・税制)の大幅な転換の可能性だ。こうした政治リスク・プレミアムの再拡大は、ポンドの追加下押し要因になり得る。