TDセキュリティーズは、カナダ銀行(中央銀行)が翌日物金利(Overnight Rate:金融機関同士が1日物で資金を貸し借りする際の基準金利)を2026年を通じて2.25%に据え置くと予想している。中立金利(景気を過熱も冷やしもしないとされる金利水準)は2027年初めに2.75%へ戻る見通しで、1月と3月にそれぞれ25ベーシスポイント(bp=0.01%ポイント、25bpは0.25%ポイント)ずつ利上げすると見立てる。
政策声明はややハト派(景気への配慮を優先し、利上げに慎重な姿勢)で、貿易環境の悪化が追加利下げにつながり得るとした。一方で、地政学リスクの高まりが連続利上げを招く可能性にも言及し、市場の短期ゾーン(フロントエンド=短期金利や短期国債の領域)で金利見通しが織り替わる要因になった。
原油高とインフレのショック
米国とイランの緊張や、世界の原油供給への脅威に伴う原油高は、インフレのショック(物価を押し上げる突発的な要因)と位置づけられている。予測では、当局は地政学リスクと、それが国内の消費者物価指数(CPI=家計が購入する商品・サービス価格の平均的な変化)にどう波及するかの見極めを優先できるとしている。
インフレ率は第2四半期に約3%でピークに達すると見込まれ、カナダ銀行の4月「金融政策報告(Monetary Policy Report)」の想定を上回る。前提は、インフレ期待(将来の物価上昇率に関する見通し)が安定的に維持され、物価上昇の広がりが小さく、コアインフレ(食料・エネルギーなど変動の大きい品目を除いた基調的な物価指標)の勢いが弱いままだというものだ。
予測は、2027年初めに2回利上げして2.75%とする内容に下方修正され、従来の「3回」から減った。
カナダ銀行は2026年末まで翌日物金利を2.25%で維持するとみる。市場では、バンカーズ・アクセプタンス先物(BA先物=短期の銀行引受手形を基にした短期金利先物。市場の利上げ・利下げ観測を反映しやすい)が年末までに少なくとも1回の利上げ確率を織り込みつつある。だが、足元の市場の混乱があっても、同行は辛抱強く様子見を続ける可能性が高い。
短期ゾーンの価格形成への示唆
地政学的緊張の高まりでWTI原油(米国の代表的な原油指標)が1バレル95ドルを上回り、物価への押し上げ圧力が強まっている。3月の総合CPIは2.9%だった一方、CPI-trim(CPIトリム=極端に上がった・下がった品目を除き、基調的な物価を測る指標)はおよそ2.1%で安定している。基調的な物価圧力は広範に強まっていないといえ、カナダ銀行が直ちに動く必要性は高くない。
このため、一時的な総合インフレの上振れを「見過ごす」ことが可能になる。これは、2025年後半にこの利下げ局面でいったん停止(利下げ休止)した行動とも整合的だ。インフレ期待が安定していることは、当局が状況の明確化を待つ余地(政策の柔軟性)を高める。従って、2026年の利上げは、市場が示唆するほど簡単ではない。
当社見通しと市場の織り込みの差は、カナダ国債利回り曲線(イールドカーブ=年限ごとの金利の並び)の短期部分が急すぎる可能性を示す。低いボラティリティ(価格変動の大きさ)が続き、翌日物金利が安定する局面で利益になりやすい戦略として、短期金利先物のストラドル売り(同じ満期・権利行使価格のコールとプットを同時に売る取引。相場が大きく動かないほど有利)が考えられる。このポジションは、市場が織り込むタカ派サプライズ(利上げに積極的な姿勢の意外な強まり)が実現しないことを見込む。
中立金利への回帰は2027年初めの話で、25bpの利上げを2回とみる。数カ月前の想定より正常化(政策金利を中立水準へ戻すこと)は緩やかな道筋だ。足元では、エネルギー価格の変動に即応するより、安定を優先する可能性が高い。