UOBは、欧州中央銀行(ECB)が政策を概ね据え置く一方、6月11日の会合で0.25%ポイント(25ベーシスポイント、金利の単位で0.01%=1bp)利上げを1回実施するとみている。雇用市場が逼迫(人手不足で賃金が上がりやすい状態)していることに加え、各国に財政余力(景気悪化時に支出を増やせる余地)があり、限定的な利上げなら景気が吸収できる可能性があると指摘する。
UOBは、ユーロ圏のインフレ率が2026年10~12月期(4Q)に3%を上回ってピークを付け、その後2027年に2%を下回ると予測する。4月の基調インフレ(エネルギーなど変動の大きい要素を除いた物価の動き)は鈍化したものの、企業・家計調査では物価上昇の見通しが強まっており、インフレが長引く可能性があるという。
インフレ見通しとエネルギーリスク
中東情勢は景気の重しになるが、成長への影響は限定的とみる。インフレ圧力の主因はエネルギー価格であり、中期見通しはエネルギーショック(急激な価格上昇)の規模と期間、さらに間接効果と二次波及(賃金上昇などを通じて物価高が広がること)に左右されるとしている。
UOBは、リスクは年内に追加で1段の引き締め(利上げ)に傾いていると述べる。ただし政策の道筋は不確実で、一次産品(原油などのコモディティ)市場の動きに大きく依存すると付け加えた。
6月11日の現状を踏まえると、ECBは0.25%ポイントの利上げを1回行う見通しだ。ユーロ圏の2026年4月の速報インフレ率は2.7%で、失業率は過去最低の6.5%にとどまっており、ECBが動きやすい環境にある。この利上げは短期金利先物(将来の短期金利を織り込む市場)ですでに概ね織り込み済みとみられる。
6月会合後の戦略
焦点は6月以降だ。市場の織り込みは年末までに約0.40%ポイント(40bp)の引き締めで、2回目の利上げ余地を示している。景気は今回の単発の利上げを吸収できる一方、エネルギーリスクが追加利上げへの意欲を抑える可能性がある。たとえば、2026年後半の追加利上げがない方向に賭ける金利デリバティブ(派生商品)として、2026年12月限のユーロ金利先物(Euribor先物:ユーロ圏の短期金利指標に連動する先物)を売る、といった取引が有利になり得る。
過去を振り返ると、ECBは2025年の大半で慎重に様子見を続け、成長が弱い局面での締め過ぎを避ける姿勢が見られた。こうした経緯を踏まえると、今回の6月利上げは新たな強い引き締め局面の開始というより、粘着的なインフレ(下がりにくい物価上昇)への調整策に近い。したがって、6月以降に変動金利が市場予想ほど上がらない想定で、受け固定の金利スワップ(receiver swap:固定金利を受け取り、変動金利を支払う取引)を検討する余地がある。
不確実性は高い。中東の緊張が再燃し、ブレント原油が1バレル95ドルを上回っているためだ。会合での政策サプライズ(想定外の決定)のリスクが高まり、オプション戦略が有効になり得る。ユーロ圏株価指数(Euro Stoxx 50)やEUR/USD(ユーロ/ドル)のオプションでストラドル(同じ期限・同じ権利行使価格のコールとプットを同時に買い、方向は問わず大きな値動きに賭ける手法)を用い、値動きの拡大から収益機会を狙うことができる。
「一度きり」の利上げは、為替市場ではハト派(引き締めに慎重)と受け止められ得る。特に米連邦準備制度理事会(FRB)が追加引き締めを示唆する場合、ECBが6月11日の声明で追加利上げなしを示せば、ユーロは下落しやすい。発表後のEUR/USD下落に備え、オプションで対応する準備が必要だ。
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