ECB(欧州中央銀行)が四半期ごとに公表する「専門家予測調査(Survey of Professional Forecasters)」によると、ユーロ圏のインフレ率(物価上昇率)は2026年に平均2.7%となる見通し。2027年は2.1%、2028年は2.0%へ鈍化すると予想されている。
ユーロ圏のGDP(国内総生産、経済規模)の伸び率は2026年に1.0%と見込まれる。前回調査の1.2%から下方修正された。
インフレ見通しと市場の織り込み
市場では、週明け月曜の欧州時間にEUR/USD(ユーロ対米ドル)が小幅に下落。直近は1.1710近辺で、前日比約0.1%安だった。
2025年時点の予測を振り返ると、市場は「今年のインフレ率は2.7%と下がりにくい」とみていた。この見方は、ECBが金融引き締め(利下げをせず、金利を高めに保つ方針)を長く続ける必要があることを示唆していた。しかし、2026年5月時点の実際の状況は異なる。
ユーロスタット(EU統計局)の2026年4月の速報値では、インフレ率は2.4%となり、年初からの低下傾向が続いた。これは、2025年に専門家が予測していた2.7%を大きく下回る。予想を下回る状況が続いている点が、いま市場の最大の注目材料となっている。
インフレ率の低下により、ECBが追加利上げ(政策金利の引き上げ)を検討する圧力は弱まり、年内の利下げ(政策金利の引き下げ)の可能性も残る。したがってトレーダーは、「金利が長期間上がりにくい」前提のポジションを検討しやすい。例えば金利スワップ(金利を固定と変動で交換する取引)で、固定金利を受け取る(受け固定)取引は、変動の政策金利が上がらないことを見込む戦略にあたる。
成長とボラティリティへの影響
また、為替市場が2025年に見られた1.1710という水準からどれほど変化したかにも注意が必要だ。EUR/USDは現在1.0850近辺で推移しており、当時想定されていた高値水準を回復できていない。この弱さを踏まえると、1.0800割れに備えて、EUR/USDのプットオプション(あらかじめ決めた価格で売る権利)を買い、下落リスクに備える選択肢がある。
成長面では、見通しは昨年予測された1.0%成長という弱気見通しよりやや良好だ。2026年1〜3月期の経済は前期比0.4%増と小幅ながら拡大し、予想をやや上回った。インフレが低下する一方で成長が急失速していないため、市場の先行きが読みづらくなりやすい。
インフレ低下と成長の底堅さの綱引きは、ボラティリティ(価格変動の大きさ)が市場で過小評価されている可能性を示す。例えば、ユーロ・ストックス50指数でストラドル(同じ行使価格・期限のコールとプットを同時に買う戦略)を購入するなど、上下どちらへの大きな値動きでも利益になり得る戦略が有効になりうる。こうしたポジションは、今後数週間で相場が現在のレンジ(一定の値幅)を抜けて大きく動く場合に収益機会が生まれる。