ドイツの消費者物価指数(HICP:EU基準で算出するインフレ指標)は4月に前年同月比2.9%上昇した。
市場予想の3%を下回った。
市場の記憶とECB
2年前の2024年4月、ドイツのインフレ率は2.9%となり、市場が織り込んでいた水準より弱かった。こうした「予想を下回る結果(下振れ)」の記憶は現在も重要だ。というのも、2026年3月のユーロ圏インフレ率は2.6%と高止まりしており、中央銀行の目標をやや上回っているためだ。このため、欧州中央銀行(ECB)の6月会合は市場にとって重要なイベントになる。
この状況から、市場は「インフレを目標に戻すために、ECBが将来の利下げを示唆する可能性」を過小評価している恐れがある。そこで、金利低下で利益を得やすい取引を検討している。例えば、EURIBOR(ユーロ圏の短期金利の指標)に連動する先物(将来の金利水準を売買する契約)を買う取引がある。通常、利下げ期待が強まり将来の金利見通しが下がると、こうした先物価格は上昇しやすい。
ECBがより慎重(ハト派:景気に配慮して利下げに前向きな姿勢)になれば、ユーロ安になりやすい。特に米連邦準備制度理事会(FRB)が慎重な政策姿勢を維持しているためだ。両地域の金利差(米国金利が相対的に高い状態)はすでにユーロ/ドル(EUR/USD)を今月1.0550まで押し下げ、1年超ぶりの安値となった。さらなる下落に備える方法として、EUR/USDのプットオプション(一定の価格で売る権利)を買う戦略がある。
株式とボラティリティのポジショニング
金利低下期待は、企業の借入コスト低下につながりやすく、一般に株式には追い風となる。ドイツ株式指数DAXのコールオプション(一定の価格で買う権利)には、株高局面で利益を狙える機会があるとみている。これらオプションのインプライド・ボラティリティ(市場が織り込む将来の価格変動率)は足元で15%前後にあり、ECBの政策シグナル次第で相場が大きく動く可能性を踏まえると、割高感は大きくない。