EUR/USDは水曜日のアジア時間序盤に1.1715近辺まで下落した。中東で停戦が実現するか不透明で、安全資産として買われやすい米ドルの需要が支えになった。市場の焦点は、水曜日後半に予定される米連邦準備制度理事会(FRB)の政策金利決定にある。
ドナルド・トランプ氏は、2カ月に及ぶ戦争を終結させる協議が続く中、イランがホルムズ海峡(原油などの輸送に重要な海上交通路)に対する米国の海上封鎖解除を求めたと述べた。CNNは、仲介役のパキスタン側がイランが今後数日以内に修正案を提出すると見込んでいると報じた。
地政学リスクとドル需要
イランは、米国の封鎖が続く限り水路は開放しないとしている。こうした状況は先行き不透明感を高め、米ドル需要を下支えする。
FRBは4月会合で政策金利を3.50%~3.75%に据え置くとの見方が多い。これは3会合連続の据え置きとなる可能性がある。市場はパウエルFRB議長の記者会見で、今後の金利の方向性を示す手掛かりを探る。
次に焦点は木曜日の欧州中央銀行(ECB)の決定に移る。市場では「タカ派的な据え置き」(利下げはせず、必要なら利上げも辞さない姿勢)を見込む声があり、6月または7月の利上げ観測もある。ゴールドマン・サックスは、0.25%(25ベーシスポイント、bp=金利の単位で0.01%)の利上げを6月と9月に2回実施し、預金金利(銀行がECBに資金を預ける際の金利)を2.50%まで戻すと予想している。
2022年の外国為替(FX)取引ではユーロの比率は31%で、1日あたりの取引額は2.2兆ドルを上回った。EUR/USDはFX取引の約30%を占め、EUR/JPYは4%、EUR/GBPは3%、EUR/AUDは2%となっている。
中央銀行と変動性
2025年当時と似た局面が見られる。地政学リスクが米ドルへの資金流入を促し、ユーロに下押し圧力がかかった。中東情勢の緊張が再燃する中、足元のEUR/USDが1.05近辺で伸び悩む場面では、米ドルの「安全資産としての魅力」が再び市場の中心テーマになっている。今週の主要中央銀行の決定は、向こう数週間の方向性を左右する重要材料となる。
市場はFRBが据え置き、フェデラルファンド(FF)金利(米国の短期政策金利)を4.00%~4.25%の範囲に維持すると織り込んでいる。直近の物価指標では、コア消費者物価指数(CPI、食品とエネルギーを除いた基調的な物価)が前四半期に3%を上回った状態が続き、短期的な利下げ観測が後退した。こうした金融政策はドル高要因になりやすい。さらに米国経済は底堅く、2026年1~3月期(第1四半期)の実質GDP成長率が2.1%と堅調だったこともドルを支えやすい。
一方、欧州ではECBも預金金利を3.00%に据え置く見通しだが、課題は異なる。ユーロ圏のインフレは落ち着いてきたものの、景気は弱く、特にドイツの製造業PMI(購買担当者景気指数。50を下回ると景気縮小を示す)が4カ月連続で悪化(縮小)しているため、強気な金融引き締め姿勢(タカ派)を打ち出しにくい。こうした米欧の景気・金利の差は、ユーロの持続的な上昇を難しくする。
デリバティブ(金融派生商品)取引の観点では、ボラティリティ(価格変動の大きさ)を持つ戦略が有効になり得る。EUR/USDのオプション(将来の売買を一定条件で行える権利)で、ロング・ストラドル(同じ権利行使価格でコールとプットを同時に買う)やストラングル(異なる権利行使価格でコールとプットを買う)は、中央銀行発表後に相場が大きく動けば、方向に関係なく利益になりやすい。1カ月物オプションのインプライド・ボラティリティ(IV、市場が見込む将来の変動率)はすでに8.2%まで上昇しており、不透明感を映している。予想外の結果が出れば、実際の変動率がさらに上振れする可能性がある。
方向性を重視する場合、現時点ではユーロ安の方が進みやすい。金利差として、米2年債利回りがドイツ国債(ブント)を120bp以上上回り、EUR/USDのショート(売り持ち)を保有することによるキャリー(保有で生じる金利差収益)がプラスになりやすい。ただし、世界的な緊張が予想外に和らげば、急反発(リリーフ・ラリー)につながり得る。先物やフォワード(将来の為替レートで行う予約取引)のショートでは、損失管理(リスク管理)を徹底する必要がある。