米国のADP雇用者数(4週平均、民間部門の雇用増減を示す指標)は4月4日時点で3.93万人に低下した。前回は5.48万人だった。
両者を比べると1.55万人の減少となる。これはADP雇用者数の増減を4週間でならした平均値で、短期的な振れを抑えて雇用の基調を見やすくしたものだ。
労働市場の勢いが鈍化
今回のADP統計は雇用の増加ペースが大きく鈍ったことを示す。4週平均は3.93万人まで落ち込み、今年に入って最も弱い水準となった。雇用の勢いが落ちているサインであり、米連邦準備制度理事会(FRB:米国の中央銀行)が金融引き締めに前向きな姿勢を強める「タカ派」の見方には逆風だ。3月の消費者物価指数(CPI:物価の上昇率を示す代表的な統計)ではインフレ率が3.1%と高止まりしており、市場は判断材料の割れを意識しやすい。
株式市場は、利下げ前倒しへの期待と景気後退リスクの綱引きとなる。こうした不確実性は値動きの大きさ(ボラティリティ)を示すVIX指数(S&P500の予想変動率を基にした指数)に表れ、今月は15%超上昇して19.5まで上げた。2025年の米地銀不安の局面以来の高水準という。相場が大きく動く局面では、SPX(S&P500指数)のストラドル(同じ期限・同じ行使価格でコールとプットを同時に買い、上下どちらかに大きく動けば利益を狙う戦略)のように、方向性を決め打ちしない選択肢が意識されやすい。
最も反応が出やすいのは金利市場だ。先物市場では9月のFOMC(米連邦公開市場委員会:政策金利を決める会合)までに利下げが行われる確率を65%程度まで織り込む。今回のデータ前は30%未満だったため、市場心理は大きく変わった。金利低下(利回り低下)を見込む手段として、SOFR先物(米国の無担保翌日物金利に連動する金利先物)や米国債先物のコールオプション(将来、決められた価格で買う権利)が挙げられる。
ドルへの影響と為替水準
利下げ観測の高まりは、米ドルに下押し圧力となり得る。第1四半期は「高金利が長く続く(higher for longer)」との見方でドル高が進みやすかったが、FRBの姿勢が強硬でなくなれば、金融引き締めを続ける国・地域の通貨に比べてドルの魅力は相対的に低下する。例えば、狭いレンジでもみ合っていたユーロ/ドル(EUR/USD)が、今後数週間で上値の節目(レジスタンス)を試す展開も想定される。