米財務長官のスコット・ベッセント氏は、制裁対象となっているイランの航空会社と取引する者に対し、米国が制裁を科す方針を示した。テヘラン発の商業便が再開される中での発言だ。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルが月曜日に報じた。
同氏は、財務省がイランに対して「最大限の圧力」をかけると述べた。また、制裁対象のイラン航空会社と取引すれば、制裁につながる可能性があると警告した。
最大限の圧力のシグナル
ベッセント氏は、供給力が過剰になるリスクについてEUと協議したと述べた。報道では詳細は示されていない。
発言を受け、市場価格は上昇した。WTI(米国産原油の代表指標)は執筆時点で前日比1.35%高の1バレル=94.65ドルとなった。
WTIがすでに94.65ドルまで上昇する中、目先は上値を警戒するシグナルといえる。イランに「最大限の圧力」をかけるとの警告は、地政学リスクによる上乗せ分(地政学リスク・プレミアム:政治や紛争で供給が不安定になる懸念を反映し、価格に追加で織り込まれる上昇分)を市場に加える。緊張が強まれば、1バレル=100ドルという節目(心理的節目:投資家が意識しやすい丸い水準)へ短期で接近し得る。
今回の焦点は航空に限らない。米国がイランの経済活動に対する姿勢を一段と厳格化し得ることを示す。タンカーの航行データ(タンカー追跡データ:船舶の位置情報などから原油輸出量を推計するデータ)では、イラン産原油の輸出は2025年後半まで意外に堅調で、日量約150万バレルに近い水準だった。二次制裁(セカンダリー制裁:制裁対象国と取引する第三国の企業・個人も制裁する仕組み)の脅しは、この供給を脅かし、脆弱な需給を引き締める。
供給面の制約
この動きは、供給面がすでに制約されている局面で起きている。今月初め、OPECプラス(OPEC+:OPECにロシアなど主要産油国を加えた枠組み)は、日量220万バレルの自主減産(任意の生産削減)を第2四半期末まで維持することで合意した。主要産油国が供給を抑える中、市場には供給途絶を吸収する余力(バッファ)が小さい。
昨年も、ウィーンでの外交協議が行き詰まりの兆しを見せた際に、規模は小さいが同様の上昇が見られた。2025年半ばの値動きは、この地域のニュースに原油市場が敏感に反応することを示した。過去の反応からみて、今回の上昇には一定の裏付けがある。
デリバティブ(派生商品:価格が原油など別の資産に連動する取引)を扱う投資家にとっては、今後数週間はコールオプション(買う権利:あらかじめ決めた価格で将来買える権利)の購入が選択肢となる。具体的には、2026年6月・7月限で権利行使価格(ストライク:権利を行使できる価格)が100ドル以上の水準が意識される。緊張の高まりはインプライド・ボラティリティ(予想変動率:オプション価格に織り込まれた将来の価格変動の見込み)を押し上げ、オプションは割高になりやすい一方、急騰の可能性を反映する。リスクを限定しつつ上昇に備える手段として、バーティカル・コール・スプレッド(同じ期限で異なる権利行使価格のコールを買い・売りしてコストと損失を抑える戦略)も検討余地がある。