ラボバンクのストラテジストは、米連邦準備制度理事会(FRB)が年内に追加利下げを行うとの見方を改めて示した。背景には、インフレ(物価上昇)への懸念が続く中で米国債利回り(米国債の利回り、金利の代表指標)が上昇したことがある。
同レポートは、次期FRB議長の人選や、ジェローム・パウエル議長が任期終了後も連邦公開市場委員会(FOMC:金融政策を決める会合のメンバー組織)に残るかどうかにも言及した。パウエル氏がFOMCを離れれば、委員ポストに空席が生じる。
Justice Department Drops Powell Renovation Inquiry
レポートによると、米司法省はパウエル氏とFRBの改修工事に関連する刑事捜査を打ち切る。これを受け、ティリス氏はウォーシュ氏(指名候補)の上院での採決に対する異議を撤回した。
市場は水曜日、パウエル氏がFOMCにとどまる意向を示すかどうかの手がかりを注視するとみられる。仮に新たな空席が生じれば、市場はFOMCが「ややハト派」(利下げに前向き)に傾く可能性を意識しやすい、という。
また、トランプ氏が望むFRB議長候補に向けた動きが進んだとされる一方で、米国債利回りはインフレリスクへの注目が続いたことで上昇した。中東の和平合意については具体的な材料が乏しいとも指摘した。
FRBが利下げに向かう可能性は高いものの、実施の時期は不透明感が強まっている。最大の障害は根強いインフレで、市場はそれに合わせて利下げ観測を調整している。政策の方向性(いずれ利下げ)は見えても、実行に踏み切る決定打(引き金)が見えにくい難しい局面だ。
Market Focus Shifts Back To Inflation
2025年を振り返ると、パウエル議長の進退や後任候補をめぐる議論など政治要因が不透明感を生んだ。当時は新たなFRB人事の可能性が意識され、市場は「ややハト派」方向を織り込みやすかった。中央銀行トップ(議長)の人選が、金利見通しに大きく影響することを示している。
足元ではその政治的な不確実性はいったん後退したが、米国債利回りは再びじり高となり、当時と同じインフレ不安を反映している。2026年初のコア消費者物価指数(コアCPI:食品・エネルギーなど変動の大きい品目を除いた物価指標)が3.5%をなお上回るなど、インフレが下がりにくい状況が続く。市場は政治的な示唆より、物価データを重視している。これは2024年に広がった「高金利が長く続く(higher for longer)」という見方にも通じる。
デリバティブ(金融派生商品)を扱う投資家にとっては、金利先物(将来の金利水準を取引する商品)で不透明感が続く前提のポジションを意識しやすい。米国債ETF(国債に連動する上場投資信託)を使ったオプション(一定の条件で売買できる権利)戦略は、金利の方向を断定せずに価格変動(ボラティリティ)を利益機会に変える手段になり得る。インフレ指標の発表のたびに市場の反応が大きくなりやすく、発表前後の短期取引の機会が生まれやすい。
また、FRA(フォワード・レート・アグリーメント:将来の短期金利をあらかじめ固定する相対取引市場)では、夏の終わりまでに利下げが行われる確率が低下している。市場参加者の一部が、FRBは想定より長く待つと見ていることを示す。金利スワップ(固定金利と変動金利などを交換する契約)を使い、変動金利の上振れリスクに備えるヘッジ(損失を抑える取引)の重要性は、今後数週間で一段と高まりそうだ。