TDセキュリティーズのエコノミストは、英イングランド銀行(BOE)が政策金利(Bank Rate、英国の基準となる短期金利)を3.75%に据え置き、採決は全会一致になるとみている。エネルギー以外の国内物価に紛争がどう波及するかを見極めるため、当面は「様子見」姿勢(wait-and-see)を続ける見通しだ。
政策声明の変更は限定的で、消費者物価指数(CPI、一般家庭が購入するモノやサービスの価格の平均的な動きを示す指標)インフレ率が短期的に高まる可能性を示す文言が盛り込まれると予想する。金融政策委員会(MPC、BOEの金利を決める委員会)は、二次波及(賃上げや価格転嫁が連鎖してインフレが長引く現象)のリスクが高まっている点にも言及するとみられる。
Policy Outlook And Projections
エコノミストは、BOEの経済見通し(プロジェクション)で1年目と2年目のインフレ率が上振れすると予想する。一方で、国内総生産(GDP、国全体の付加価値の合計で景気の大きさを示す指標)は当初やや強めでも、その後は弱まる見通しだ。
2年目のインフレ率は2%をやや上回り、前回見通しの1.8%から上方修正されると予測する。さらに、3年目のインフレ率が2月時点の見通し(2.0%)を上回るリスクもあるという。
MPCは見通しの中で、シナリオ分析(前提を変えた複数の想定で経済の結果を比べる手法)を一段と重視するとみられる。想定の一例として、エネルギー価格の上振れ圧力が強まり、インフレ率は高く、GDP成長率は弱くなるケースが挙げられる。
Trading Implications For Rates Markets
昨年懸念された「インフレ率が目標を上回り続ける」状況は、その後の大幅な金融引き締め(利上げなどで景気と物価を抑える政策)にもかかわらず、概ね現実となっている。英国家統計局(ONS)の最新データでは、英国のCPI上昇率は2.4%と、目標の2%を上回る水準が続く。一方、景気は見通しより弱く、直近2四半期の経済成長はほぼ停滞している。
この状況を踏まえ、金利デリバティブ(将来の金利をもとに価値が決まる金融商品)市場では、金融緩和(利下げなどで景気を下支えする政策)の開始時期とペースに焦点が移る。昨年は「据え置きの長期化」や「追加利上げ」を織り込む局面だったが、足元のSONIA先物(英ポンドの無担保翌日物指数金利SONIAを参照する先物)は、半年以内にBOEが利下げに転じる可能性を示唆している。投資判断の中心はこの転換のタイミングにあり、スワップ(金利の固定と変動を交換する取引)やオプション(一定条件で売買できる権利)は、年後半の主要MPC会合日程を意識した設計になりやすい。
シナリオ分析の重要性は引き続き高く、ボラティリティ(価格変動の大きさ)を取引する投資家に機会を与える。インフレの粘着性(下がりにくさ)とGDP成長の停滞が併存するため、短期金利(短期金利先物に連動する「ショート・スターリング」関連)オプションのインプライド・ボラティリティ(市場が織り込む将来の変動率)は高止まりしている。今後数週間は、相場の方向を決め打ちするより、どちらの方向にも大きく動いた場合に利益を狙う戦略が有利になり得る。