コメルツ銀行のアナリストは、米連邦準備制度理事会(FRB)が次回会合で、政策金利の指標であるフェデラル・ファンド(FF)金利の目標レンジを3.50%~3.75%で据え置くと予想している。据え置きは3会合連続となる見通しだ。背景には、インフレ率が目標を上回った状態が続いていることに加え、中東情勢の緊張や原油高に伴う物価押し上げ圧力があるという。
アナリストは、インフレ率が5年間にわたり目標を上回っていると指摘する。また、市場や家計・企業が将来の物価上昇率をどう見込むかを示す「インフレ期待」が、以前ほど強固に安定していない可能性にも言及した。
Fed Expected To Hold Rates
アナリストは、現状で利下げに踏み切ればインフレ圧力を強めかねないとして、FRBは利下げを回避するとみる。利下げを求める政治的圧力がある点は認めつつも、基本シナリオは会合で「現状維持」だという。
加えて、最大でもミラン理事が利下げに票を投じる可能性があるにとどまり、結論としては3.50%~3.75%の目標レンジが維持される見通しとしている。
また、インフレが鈍化すれば年末にかけて利下げが再開される可能性があると予測。米ドルについては、米国で大幅な利下げが行われることや、FRBの独立性(政治から距離を置いて金融政策を決められること)への懸念を背景に、中長期的に下落(ドル安)しやすいとの見方を示した。
Market Implications For Traders
この環境は、今後数カ月の利下げを市場が過度に織り込んでいる可能性を示す。トレーダーは、SOFR先物のオプション(担保付き翌日物調達金利=SOFRを基にした短期金利先物の、売買する権利)を用い、「FRBの据え置きが想定より長引く」と利益になりやすい戦略を検討し得る。インフレが下がりにくい一方で金融緩和を求める力もあるため、短期金利は大きくは動きにくい(レンジ相場になりやすい)局面になりやすい。
また、原油価格が重要要因になるとの見立ては現実となり、2025年の中東情勢悪化で原油は1バレル110ドル超まで上昇した。イランとの戦争終結で価格は低下したものの、WTI原油(米国産原油の代表的な指標)はなお高水準で、85ドル近辺で推移している。こうしたコスト高が持続し、コアインフレ(食品・エネルギーなど変動が大きい品目を除いた基調的な物価上昇率)を押し上げ続け、FRBが慎重姿勢を崩しにくい理由になっている。
米ドル安の予測も進行している。ドル指数(DXY:主要通貨に対する米ドルの強さを示す指数)は、2025年の一時期に105近辺で推移していたが、その後は98程度まで低下した。FRBの独立性低下への懸念や、財政赤字の拡大(国の借金が増えること)は、通貨先物やオプションを使ったさらなるドル安への備え・投機を促し得る。
インフレ期待を抑える必要性と、より大幅な金融緩和を求める政治的要請の対立は、市場を不安定にしやすい。短期的にはボラティリティ(価格変動の大きさ)の上昇が示唆される。デリバティブ(先物・オプションなど派生商品)取引の参加者は、下落や急変への保険を買う、または不確実性の急上昇に賭ける手段として、VIX指数(株式市場の不安度を示す指数)のコールオプション(将来、一定価格で買う権利)の活用を検討し得る。