英国のインフレ指標と企業景況感調査(PMI=購買担当者景気指数)が予想を上回り、次回の英中銀(イングランド銀行)会合で「タカ派(利下げに慎重、または利上げ寄り)意見」が出る可能性が意識されている。ただし、市場の基本シナリオは「全会一致で金利据え置き」のままだ。
製造業PMIは51.0から53.6に上昇し、新規受注は52.6に改善した。サービス業PMIは50.5から52.0に上がり、新規受注は50.1となった。
Inflation And Survey Signals
消費者物価指数(CPI=家計が購入する商品・サービスの価格動向を示す指標)の上昇率は3月に前年同月比3.3%となり、2月の3.0%から加速した。食品・エネルギーなど変動が大きい品目を除いたコアインフレ率は3.1%へ小幅に低下した。
サービス価格のインフレ率は4.5%に上昇し、財(モノ)価格のインフレ率も2.1%へ上がった。サービス部門のコストインフレ(企業が負担するコストの上昇率)は、指数開始(1996年7月)以来で最大の月間上昇を記録した。
英中銀は、1〜3月期(Q1)から4〜6月期(Q2)にかけてインフレの鈍化は小さいと見込み、平均で3%近辺になると予測している。失業率は0.3ポイント低下して4.9%となった。
賞与を除く平均賃金の伸びは、2月時点で3カ月平均の前年同期比3.8%に減速(1月は上方修正後4.1%)。民間部門の賃金伸び率も3.3%から3.2%へ鈍化した。
Meeting Risks And Market Positioning
会合の見方は、9対0で政策金利を据え置く「全会一致」だ。2027年に3回の利下げが行われるという見通しもある。
次回の英中銀会合を前に、市場は慎重姿勢を強めている。インフレ率が目標の2%をなお上回っているためだ。現在の政策金利(Bank Rate=英中銀が設定する基準金利)は4.25%。直近データでCPIが2.8%と示されても、物価上昇圧力が解消したとは言い切れない。この状況は、2025年この時期にインフレが3.3%と予想外に強く、正常化シナリオに疑問が出た局面と似ている。
2025年には、PMIの強さとサービス部門コストの急上昇が重なり、タカ派的な反対意見(据え置きをより強く主張する票や発言)が話題になった。足元のサービス業PMI 51.5も堅調で、当時の経験からみると、オプション市場(将来の価格変動に備える取引)が「タカ派的な据え置き」やタカ派寄りのコメントのリスクを十分に織り込んでいない可能性がある。利下げを先送りするようなトーンが出れば、短期金利先物(将来の短期金利を反映する先物)で価格変動が大きくなる恐れがある。
2025年と異なる点は賃金データだ。最新の英国国家統計局(ONS)によれば賃金上昇率は4.5%前後にある。ピークからは低下したものの、インフレ率をなお上回っており、金融政策委員会(MPC=英中銀の政策決定機関)にとって悩みの種になっている。実質賃金(賃金上昇から物価上昇を差し引いた購買力)が伸び続ける状況は、年後半に織り込まれていた急速な利下げ観測に対して逆風となる。
このため、英ポンドの短期オプションを使った取引戦略が示唆される。英中銀が想定以上に強い姿勢を示せば、GBP/USD(英ポンド/米ドル)が短期的に上振れする可能性がある。2025年のタカ派的据え置き後に見られたような一時的な上昇に近い動きだ。もっとも、その後は市場の焦点がいずれ始まる利下げ局面に戻り、上昇が打ち消される展開も想定される。