日本の生鮮食品とエネルギーを除く全国消費者物価指数(CPI)は3月に前年同月比2.4%上昇した。前回の2.5%から伸びが鈍化した。
日本の「コアインフレ(基調的な物価上昇。生鮮食品とエネルギーを除いて一時的な変動をならす指標)」が2.4%に低下したことで、物価上昇圧力がピークアウト(上昇の勢いが頭打ち)しつつある可能性が示唆される。これにより、日本銀行が政策金利(中央銀行が景気や物価を調整するために設定する短期金利)を急ピッチで引き上げる必要性はやや後退する。2026年4〜6月期に利上げが短期間で連続するとの見方は、慎重に見直すべきだろう。この数字は、2024年の政策転換後に強まっていた「タカ派(利上げに積極的)」見通しに一石を投じる。
Implications For Currency Strategy
為替トレーダーにとっては、円キャリートレード(低金利の円で資金を調達し、より金利の高い通貨で運用して金利差を狙う取引)の妙味が改めて意識されやすい。日米の金利差は大きい状態が続く可能性が高い。円は1ドル=160円近辺で推移しており、これは数十年ぶりの水準だ。円安または円が大きく上がらない前提で利益を狙う戦略として、ドル円でアウト・オブ・ザ・マネー(今すぐ権利行使しても得にならない水準)の円コール(一定のレートで円を買う権利)を売るといった「オプション(将来の売買権利を取引する金融商品)」戦略が検討対象となる。
この環境は日本株に追い風であり、日経225先物(将来の株価指数水準で売買する契約)を買い持ち(上昇を見込んで保有)する選択肢がある。利上げペースが緩やかなら、企業の借入コスト(資金調達にかかる金利負担)は想定ほど速く上がらず、利益率(売上に対する利益の割合)を守りやすい。直近の四半期では利益率が平均8%伸びた。2025年は金利上昇が株式に与える悪影響への警戒が強かったが、その不安は弱まりつつある。
債券市場では、インフレ鈍化が示されたことで、日本国債(JGB)の利回り(債券を保有した場合の年率の収益率)が想定ほど急上昇しない可能性がある。10年国債利回りは足元で約1.1%近辺だが、短期的に1.5%へ向かう確度は低下したとみられる。こうした安定局面では、先物を一方向に売り建てる(価格下落を狙う)より、利回りの変動が一定範囲に収まることを見込むデリバティブ(先物・オプションなど、元になる資産の価格に連動する金融商品)戦略の方が選好されやすい。
最新の春闘(企業と労働組合が春に行う賃金交渉)も同じ流れを補強し、平均賃上げ率は約4.6%となった。歴史的にみても強い伸びで、実質賃金(賃金上昇から物価上昇の影響を差し引いた購買力)の押し上げ要因となる。一方、2025年の5.2%という大幅賃上げからは減速しており、賃金上昇のクールダウンは日銀に「次の一手」を急がず様子見する余地を与える。