金(ゴールド)は0.48%安の4,716ドルとなった。一時4,664ドルまで下落した。米国債利回り(国債の利率。利回り上昇=債券価格下落)が上昇し、金価格の重しとなった。取引水準は4,700ドル近辺で推移した。米10年国債利回りは約4.5bp(ベーシスポイント。0.01%)上昇し4.349%となり、金は8日ぶりの安値を付けた。
中東情勢では、イラン国会議長(議会の代表)モハンマド・バゲル・ガリバフ氏が交渉チームを辞任したとの報道や、イスラエルが週末までに戦闘が再開する可能性に備えて警戒態勢に入ったとの報道が続いた。ホルムズ海峡(主要な原油輸送ルート)は閉鎖されたままで、米国とイランが船舶の拿捕(だほ。船を押収すること)を続けている。ガリバフ報道を受けてWTI原油(米国の代表的な原油指標)は上昇した。
Us Data And Yield Pressure
米指標では、新規失業保険申請件数は21.4万件と、予想の21.2万件を上回った。S&Pグローバルの4月速報PMI(購買担当者景気指数。50超は景気拡大)は改善し、製造業は52.3から54へ、サービス業は49.8から51.3へ上昇し、いずれも予想を上回った。
市場の金利見通しは変化した。スワップ市場(金利スワップから読む将来の利下げ予想)は、2026年初にFRB(米連邦準備制度理事会)が25bpの利下げを少なくとも2回行うとの見方から、当面は金利据え置きへと傾き、初回利下げは2027年7月の会合との見方が優勢になった。金曜日は、米ミシガン大学の4月消費者信頼感指数(確報値)に注目が集まる。
テクニカル面では、金は100日・20日SMA(単純移動平均)である4,723ドル、4,706ドル近辺で推移した。下値の目安(サポート)は4,650ドル、4,600ドル、4,549ドル。上値の目安(レジスタンス)は4,800ドル、50日SMAの4,876ドル、4,900ドルとされる。
米国債利回りが4.3%を超えて上昇したことで、金には下押し圧力が強い。PMIの上振れは米景気の底堅さを示し、安全資産(相場が不安定なときに買われやすい資産)需要を急いで高める材料は弱い。こうした経済指標の強さが、中東の地政学リスクよりも当面は重視されている。
市場はFRBの利下げ時期を2027年半ばまで大きく後ろ倒しした。背景には、2026年3月のCPI(消費者物価指数)が3.8%と強かったことがあり、インフレ再燃への警戒が意識されている。金は利息が付かない資産(非利息資産)であり、金利が高い局面では保有コスト(機会費用)が不利になりやすい。
Technical And Positioning Outlook
テクニカル上は弱気材料が増えている。金は主要な20日・100日移動平均を下回って推移している。先週のCOT(Commitment of Traders、米商品先物取引委員会による建玉報告)では、ヘッジファンドのネットロング(買い越し)縮小が6週間ぶりに確認され、利益確定が出始めた可能性がある。4,650ドルを明確に割り込むと、4,600ドル方向への売りが強まる可能性がある。
一方で、ホルムズ海峡を巡る状況には注意が必要だ。WTI原油は1バレル115ドル超まで上昇しており、情勢が悪化すれば、インフレ対応(インフレヘッジ)や安全資産需要が急速に戻り、金が反発する余地がある。このため、先物の単純な売り持ちよりも、プットオプション(売る権利。下落局面で利益が出やすい)で損失を限定する、あるいはベア型クレジット・スプレッド(権利行使価格の異なるオプションを組み合わせ、受け取るプレミアムでリスクを抑える戦略)を使う方が慎重といえる。