野村は、欧州中央銀行(ECB)が4月30日の理事会で預金金利(銀行がECBに預ける資金に付く金利)を2.00%に据え置くとみている。さらに、同金利は2027年10~12月期(第4四半期)まで2.00%で推移すると予想する。
イラン戦争によるショック後も、金融政策は「データ次第(発表される経済指標を見て判断する)」の運営が続く見通しだ。重要な材料は、ブレント原油価格(北海産原油の国際的な指標価格)、インフレ期待(将来の物価上昇率に対する家計・企業・市場の見通し)、賃金動向となる。
この予測は、中東情勢の悪化がエネルギー価格の急騰(エネルギー価格ショック)を招くものの、ユーロ圏経済への中期的な影響は限定的、という前提に立つ。ECBは直ちに反応するのではなく、今後発表されるデータで影響を確認してから判断する可能性が高い。
野村は、利上げの条件を原油価格に連動させている。6月のECB理事会時点でブレント原油が1バレル95ドルを上回って推移していれば、6月に0.25%(25bp=0.25%ポイント)の利上げを行い、9月にも同幅の利上げを実施すると予想する。
利上げには、2022年のような「インフレが高止まりする兆候」や、インフレ期待の上昇が必要になる。イラン戦争を受けた利上げ対応があり得る最短の会合は6月とみられている。
ECBは4月30日の会合で預金金利を2.00%に据え置く見通しだ。決定自体は市場の大方の想定通りとみられるため、注目点は今後の政策運営に関する「トーン(声明や会見の言い回しが示す姿勢)」の変化に移る。中銀は、イラン戦争によるショックが景気や物価にどう波及するかを見極めてから動きたい可能性がある。
より攻撃的な、いわゆる「タカ派(インフレ抑制を重視し利上げに前向き)」への転換リスクは、エネルギー価格に直結する。ブレント原油は変動が大きく、足元では地政学リスクの高まりを受けて1バレル98ドル近辺で推移しており、重要水準とされる95ドルを上回る。これに、ユーロ圏の4月速報インフレ率が2.8%に上昇したことや、1~3月期の妥結賃金(労使交渉で決まった賃金)の伸びが4.5%と底堅いことが重なる。
金利デリバティブ(将来の金利変動に連動する金融派生商品)を取引する参加者にとっては、金利のボラティリティ(価格変動の大きさ)に関する取引機会が生まれる。4月会合が材料難になりやすい一方、6月・9月のユーロ金利先物(Euribor先物:ユーロ圏の短期金利指標に連動する先物)のオプション(将来、一定条件で売買できる権利)が、利上げ確率を十分に織り込んでいない場合、価格が割高・割安になっている可能性がある。今後1カ月のエネルギー・物価データを市場が消化する過程では、ボラティリティ上昇に備える姿勢が妥当とする。
また、イールドカーブのスティープ化(短期金利が上がりやすく、長期金利の上昇が相対的に小さいことで、短期と長期の金利差が広がる動き)を狙う取引にも注目している。2022年のエネルギー価格ショックを踏まえると、理事会は「インフレが期待に定着する(人々が高い物価上昇を当たり前と考え、賃上げや価格設定に反映される)」兆候に敏感になりやすい。前回の大きなインフレ局面の経験は、原油価格が下がらなければ、ECBが市場の想定以上に踏み込んで動く可能性を示唆する。
結局のところ、6月のECB判断で最重要となるのは原油価格だ。足元のブレント原油の現物価格(いま取引される価格)が、短期の金融政策の主要なシグナルになっている。したがって、金利デリバティブのポジションは、エネルギー市場の動きを注視しながら管理する必要がある。