イランがホルムズ海峡で船舶3隻に向けて発砲し、そのうち2隻をイラン領海内へ護送したと、ウォール・ストリート・ジャーナルが水曜日に報じた。これらの事案は、ドナルド・トランプ米大統領が停戦を延長する一方、イラン港湾への米国による封鎖(港に出入りする船の航行や物流を実力・制裁で妨げる措置)を維持した翌日に起きた。
イランメディアは、イスラム革命防衛隊(IRGC:イランの精鋭軍事組織で、海上での拿捕〔だほ=船を押収し管理下に置くこと〕なども担う)が2隻をイランへ連行していると伝えた。ホワイトハウスのカロライン・レヴィット報道官は、押収は停戦条件に違反しないとの見解を示した。
米WTI原油先物は、執筆時点で前日比0.35%高の1バレル92.25ドルだった。
昨年、イランがホルムズ海峡で船舶を拿捕した際の緊張は記憶に新しい。2025年のこの出来事はWTIを92ドル超へ押し上げ、市場に大きな動揺(価格の急変に対する警戒)をもたらした。市場では当時の急変動の記憶が、現在の取引戦略に影響している。
現時点で海峡の原油輸送は安定している。米エネルギー情報局(EIA:米政府のエネルギー統計・分析機関)の最新データによれば、通過量は日量約2,100万バレルと、危機前に近い水準だ。ただし外交交渉(当事国間の話し合いで緊張緩和を図ること)は不安定で、決裂と受け止められれば、市場にリスクプレミアム(不確実性に対して上乗せされる価格)が即座に再び織り込まれうる。原油価格が足元で1バレル85ドル前後で落ち着いていても、油断しにくい状況だ。
こうした中、原油オプション(将来、あらかじめ決めた価格で売買できる権利)のインプライド・ボラティリティ(市場が見込む将来の変動の大きさ)は低水準にある。CBOE原油ボラティリティ指数(OVX:WTI関連オプション価格から計算する変動性指標)は32近辺で推移し、2025年に50超まで上がった局面とは対照的だ。これは、WTI先物に対するロング・ストラドル(同じ満期・同じ権利行使価格でコール〔買う権利〕とプット〔売る権利〕を同時に買い、価格が大きく動けば利益を狙う手法)のようなオプション戦略が、相対的に低コストで急変に備える手段になり得ることを示す。過去の供給混乱(供給が滞り価格が急騰する事態)から、地政学リスク(紛争や対立による市場への悪影響)は一夜で織り直され得る。
別の方法として、ブレント原油とWTIの価格差(スプレッド:2つの価格の差)に注目する手がある。足元のスプレッドは1バレル3.50ドル強と小さい。歴史的には、ホルムズ海峡の緊張は海上輸送との結びつきが強いブレントにより大きく影響し、このスプレッドが拡大しやすい。2019年には7.00ドル超まで広がった例がある。中東情勢の再燃に備える取引として、ブレント-WTIスプレッドのロング(差が広がる方向に賭ける建玉)を構築することは、狙いを絞った戦略になり得る。