ラボバンクのストラテジスト、マイケル・エブリ氏は、ユーロを巡る環境は複雑だと指摘する。背景には、ウクライナ戦争、EU(欧州連合)の資金計画、そして欧州内部の政治的な分断がある。さらに、安全保障や外交政策をめぐり、米国と欧州の緊張が広がっているとも述べた。
同氏は、ウクライナが戦場で戦果を上げており、勝利が現実味を帯びつつあるとみる。無人機による攻撃が追い風になっているという。加えてEUは、イラン戦争の影響で米国からの武器供与(武器の引き渡し)に遅れが出る事態に備えている。
英タイムズ紙によると、英国は自国の海域でロシアの「シャドーフリート(制裁逃れに使われるとされる実態の見えにくいタンカー群)」のタンカーを拿捕(法的に押さえること)していない。係留(港に船をつなぎとめること)や維持管理の費用が理由だという。仏独は、ウクライナに「象徴的」な利益は与える一方で、EU共通予算(EU全体の支出に使う予算)へのアクセスや議決権は認めない形でのEU加盟の進め方を検討していると報じられている。
米ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、ドイツが再軍備(防衛力の増強)を加速させるなか、多くのドイツ企業が防衛関連の供給企業になろうとしていると伝えた。記事はAIツールの支援で作成され、編集者が確認したとしている。
ただし、米国の支援の遅れや、ウクライナの将来をめぐるEU内部の対立は、不確実性を大きくする。ポートフォリオ(保有資産の組み合わせ)を守るため、VSTOXX先物またはコールオプションの購入は妥当なヘッジ(損失を抑える備え)になり得る。VSTOXXは欧州株の予想変動率(市場が見込む価格のぶれの大きさ)を示す指数で、過去1カ月で15%上昇し、22を超えたという。VIX指数(米国株の予想変動率を示す指数)が2022年の戦闘拡大局面で35を上回ったことを踏まえると、地政学リスクが市場に急速に波及し得る点は意識しておきたい。
ユーロはこうした相反する力の間で揺れており、EUR/USD(ユーロ/米ドル)で明確な方向に賭けるのは危うい。ユーロのロング・ストラドル(同じ行使価格・同じ期限のコールとプットを同時に買う戦略)は、大きな価格変動がどちらの方向に出ても利益を狙えるため有効になり得る。ECB(欧州中央銀行)が2026年4月上旬に公表した最新の議事要旨では、今後の政策をめぐり理事会の意見が割れていることが示され、通貨が急変しやすい状況を裏付けた。