スコシアバンクのストラテジスト、ショーン・オズボーン氏とエリック・テオレ氏は、米ドルが落ち着いたことでカナダドルが小幅に下落したと述べた。もっとも、米ドル/カナダドル(USD/CAD)の広範な下落基調(米ドル安・カナダドル高の流れ)は続いているとの見方を示した。
両氏は、カナダの消費者物価指数(CPI、家計が購入するモノやサービスの価格の上がり方を示す統計)が市場予想より弱かったと指摘。これにより当局は、エネルギー価格の上昇が物価に与える影響を見極める時間が増えるとした。
また、第1四半期(Q1)の企業景気見通し調査(Business Outlook Survey、企業への聞き取りで景況感や価格見通しを把握する調査)に触れ、インフレ期待(企業や家計が見込む将来の物価上昇率)が底堅いと説明。インフレが2~3%の範囲にとどまると見込む回答が過去最多だったという。
金融政策については、カナダ銀行(BoC、カナダの中央銀行)が4月29日の金融政策決定で政策金利(中銀が設定する代表的な金利)を2.25%に据え置く見通しとした。年末までに政策が小幅に引き締まる(利上げ方向に動く)可能性もあると述べた。
テクニカル面(過去の価格推移から相場の節目を探る分析)では、1.3750近辺に上値抵抗があると指摘。40日移動平均線(過去40日間の平均価格で、相場の流れをみる指標)、3月中旬の高値、かつての支持線(下値を支えた水準)が重なるためだとした。下値のめど(サポート)は1.3625~30と1.3500~25にあると述べた。
2025年のこの時期を振り返ると、当時の一般的な見方は「米ドルはカナダドルに対して下落しやすい」だった。これはUSD/CADの下落基調が強く、継続しているという考えに基づいており、分析では1.3750近辺に目立つ上値抵抗があるとされていた。
その後、状況は大きく変わった。カナダ銀行が現在、別の道筋を示唆しているためだ。BoCは直近で主要政策金利を3.50%に据え置いた一方、景気減速を理由に6月にも利下げ(政策金利の引き下げ)に踏み切る可能性を示している。前年同時期に見られた「小幅な引き締め寄り」の姿勢とは対照的だ。
一方で、米国との金融政策の方向性の違い(政策の分岐)が通貨ペアを動かす主要因になりつつある。最近の統計では、米国経済が先月に28万5,000人という予想外に強い雇用増を記録し、米連邦準備制度理事会(FRB、米国の中央銀行)が引き締め姿勢を維持しやすい環境となった。利下げ観測が後ずれするなか、金利見通しの差が広がり、USD/CADを押し上げる圧力になっている。
インフレの状況も2025年当時から変化した。前年のCPI下振れはBoCに時間的余裕を与えたが、2026年3月の最新統計では、インフレ率が2.9%と高止まりしている。特に住居費(家賃や住宅関連コスト)が要因となっている。ただ、市場は足元の物価よりも、中央銀行の先行きの指針(フォワードガイダンス、今後の政策運営についての示唆)をより重視しているようだ。
デリバティブ(株価や金利、為替などを基に価格が決まる金融商品)取引の観点では、2025年の「USD/CAD下落目線」からの転換が示唆される。政策の分岐を受け、USD/CADの上昇で利益を狙う戦略として、コールオプション(将来、あらかじめ決めた価格で買う権利)の購入や、ブル・コール・スプレッド(高い権利行使価格のコールを売り、低い権利行使価格のコールを買う組み合わせで、コストを抑えつつ上昇に備える手法)を検討すべきだとする。これらは損失がオプション代(プレミアム)に限定され、米ドル高の局面で上振れの利益機会を得られる。