EUR/GBPは火曜日に下落した。英国の労働市場統計を受けてポンドが底堅く推移した一方、ユーロ圏の景況感(企業や投資家の心理)に関する調査指標が弱く、ユーロの重しとなった。相場は0.8700近辺で推移し、米国・イランの緊張や和平協議の不透明感から、トレーダーは慎重姿勢を崩さずレンジ内の動きにとどまった。
ユーロ圏の景況感は4月に悪化した。ZEW景況感指数(ドイツの経済研究機関ZEWが投資家などの見通しを調べた指数)は-20.4と前月の-8.5から低下し、ドイツのZEW指数も-17.2と前月の-0.5から低下した。いずれも市場予想を下回った。ZEWのコメントによると、中東情勢の緊張やエネルギー供給不安が先行きの悪化につながっている。
市場では、原油高がインフレ(物価上昇)リスクを高めるとして、欧州中央銀行(ECB)が政策金利を引き上げる可能性も引き続き織り込まれている。ECB関係者は、追加の経済指標と不透明な環境を踏まえて判断すると述べた。
英国では、失業給付申請者数の増減を示す「請求者数変化(Claimant Count Change)」が3月に+2.68万人となり、予想を上回った。雇用者数の増減(Employment Change)は2月までの3カ月で+2.5万人だった。ILO失業率(国際労働機関の基準で算出する失業率)は5.2%から4.9%に低下し、市場の関心は水曜日発表の3月英国インフレ統計に移った。
ロイターの調査では、62人全員のエコノミストが、英中銀(BOE)が4月に政策金利(銀行金利)を3.75%に据え置くと予想した。また、約53%が年内は金利が据え置かれると見込んでいる。
現在のEUR/GBPは0.8550近辺で取引されており、1年以上前に見られた0.8700水準から大きく水準を切り下げた。この動きの中心は、「ECBの利下げがBOEより先になる」という見方の強まりだ。両中銀の政策の方向性の違い(政策の分岐)が、EUR/GBPに下押し圧力を与えている。
ユーロ圏の景気は脆弱だ。ユーロスタットの最新統計では、前期のGDP成長率はわずか0.2%にとどまった。この低成長を受け、市場ではECBが早ければ今夏にも利下げに動くとの見方が広がっている。
一方、英国経済は相対的に底堅く、ポンド高を支えている。英国国家統計局(ONS)の最新データでは失業率は4.3%で横ばいだ。さらに重要なのは、サービス価格のインフレ率が4.5%超と高止まりしている点だ。サービス分野の物価上昇が続くことで、BOEは利下げを急がず「高金利を長く維持」しやすくなる。
早い時期の2025年を振り返ると、英国の労働市場が堅調で、ユーロ圏の景況感が大きく悪化するなかでも、BOEは政策を維持する余地があった。現在も似た構図が見られる。ただし主因は、心理の悪化よりも「インフレと成長の差」が明確になっている点に移っている。こうした過去のパターンから、EUR/GBPは下方向に動きやすい状況が続く可能性がある。
デリバティブ(金融派生商品)を使う投資家にとっては、EUR/GBPの緩やかな下落で利益を得る、または下落リスクに備える戦略が有利になりやすい。具体的には、通貨ペアのプット・オプション(期日までにあらかじめ決めた価格で売る権利)を買うと、今後数週間で0.8400方向への下落に備えられる。別の方法として、ベア・プット・スプレッド(安い権利行使価格のプットを買い、より低い権利行使価格のプットを売ってコストを抑える戦略)を組むと、支払うプレミアム(オプション代金)を抑えつつ、一定の下落局面で利益を狙える。
注目の材料は、ユーロ圏のHICP(Harmonised Index of Consumer Prices:加盟国で比較しやすいよう基準をそろえた消費者物価指数)と、英国のCPI(Consumer Price Index:消費者物価指数)だ。ユーロ圏のインフレ低下が英国より速い兆しが出れば、この見方を後押しする。データが両中銀の方向性の違いを裏づけると見込まれる。