ブレント先物は米国とイランの衝突をめぐる報道で大きく動き、足元では1バレル=95ドルまで反発した。現物の供給はなお逼迫しており、ホルムズ海峡(ペルシャ湾の主要な海上輸送ルート)を通る輸送は大きく制限されている。
OPEC(石油輸出国機構)の供給は3月に約42%減少したと推計され、4月も同程度の落ち込みが見込まれる。基本シナリオでは5月に生産が回復し始めるが、完全に平常水準へ戻るまで約9カ月かかる。
1956年以降の中東における主要なエネルギー危機5件では、供給が平常化するまで平均で約8カ月を要した。ペルシャ湾からの供給(ペルシャ湾諸国からの原油・石油製品の輸出)の見通しは、4月下旬ではなく5月中旬まで改善が遅れる方向に変化している。
供給回復が遅れる前提から、2026年末のブレント価格予想は1バレル=79ドルから85ドルへ引き上げられた。完全な平常化は2026年末ごろと想定される。
仮に敵対行為が4月下旬までに終結しても、世界の在庫(タンクや備蓄にある在庫量)が持続的に平常水準へ戻り始めるのは、早くても5月下旬以降とみられる。理由として、生産停止(操業を止めている油田・設備)、輸送制限、保険の制約、港湾の損傷、がれき撤去などが挙げられている。
紛争関連の見出しで日々変動する価格を過度に追うべきではない。ブレントは直近で1バレル=95ドルまで押し上げられたが、ホルムズ海峡の物流制約で現物市場は極端にタイトだ。輸送保険の保険料(航行リスクに対して支払う追加コスト)はこの1カ月だけで3倍になったとの情報もある。需給面の逼迫が続く以上、下落局面は短期で終わる可能性が高い。
供給ショックはすでに顕在化している。OPECの供給は先月約42%減少し、4月も同程度の減少が見込まれる。タンカー追跡データ(船舶の位置情報から輸出量を推計するデータ)でも、今月これまでのOPECの海上輸出が日量400万バレル超減っていることが確認される。これは想定上の問題ではなく、実際に供給が市場から減っている。
過去の経験則では、混乱の解消は時間がかかる。中東のエネルギー危機では供給平常化まで平均8カ月を要してきた。基本シナリオは回復に9カ月で、完全復帰は2027年初まで見込まれない。短期間で価格が下がる前提に賭けるのはリスクが高い。
世界の在庫が増え始めるのは早くても5月下旬以降とみられ、直近データもそれを示す。例えば政府統計では、米国の商業用原油在庫(民間企業が保有する在庫)は過去4週間で1500万バレル超減少した。季節要因の平均を大きく上回るペースの取り崩しで、需要が供給制約下の供給量を上回っていることを示す。
年末の予想が1バレル=85ドル方向へ修正されたことを踏まえると、価格が高止まり、または上昇しやすい局面を前提にした対応が意識される。例えばコールオプション(一定価格で買う権利)を買う、またはブル・コール・スプレッド(安い行使価格のコールを買い、別の高い行使価格のコールを売ってコストを抑えつつ上昇に備える戦略)を組むといった方法がある。供給の平常化が年後半まで遅れる想定で、上昇圧力を取り込みやすい。