OCBCのストラテジストであるシム・モー・シオン氏とクリストファー・ウォン氏は、米国とイランの戦争に伴うエネルギー価格の急騰(原油やガスなどの価格が短期間で大きく上がること)以降、日本国債(JGB)の利回り曲線が「スティープ化(長い期間の金利が短い期間の金利より速く上がり、傾きが急になること)」したと指摘した。2月以降、他のG10(主要10カ国)市場では利回り曲線の「フラット化(長期金利と短期金利の差が縮むこと)」が進んだのと対照的で、日銀(BoJ)の政策運営への信認に疑念が出ているという。
両氏は、日銀が4月28日に政策金利を0.25%(25bp=0.25%ポイント)引き上げると予想する。一方、市場では「タカ派的な据え置き(利上げはしないが、近く利上げする姿勢を強く示すこと)」の可能性も残っている。現状への対応が日銀は遅れているとの見方が広がり、4月の利上げ圧力が強まっているとも述べた。
日銀が利上げしなければ、ドル/円が160円台に上昇する可能性があると警告する。そうなれば財務省が「為替介入(政府が市場で通貨を売買し、急激な円安などを抑えること)」に動き、ドル/円を155円近辺へ押し戻す狙いが出るという。
また、片山財務相(※文脈上の財務相発言)による直近の発信は、当局が行動する用意があることを示すとした。ドル/円の2026年末目標は155円を維持している。
日銀は信認面での課題が拡大している。JGB利回り曲線の急なスティープ化がそれを示す。米国とイランの戦争によるエネルギー価格ショック後、日本の2年国債と10年国債の利回り差(スプレッド=2年と10年の金利の差)が120bp超に拡大した。2025年後半に他の主要国で見られた利回り曲線のフラット化とは対照的だ。市場が「日銀の物価対応が遅い」とみていることを示唆する。
4月28日の重要会合が迫るなか、為替の値動きが大きくなるリスクに注意が必要だ。ドル/円の1週間「インプライド・ボラティリティ(オプション価格から逆算される将来の変動率予想)」は16%まで上昇し、年平均を大きく上回る。結果が二者択一に近いとの見方で市場が神経質になっている。オプションを使うなら、ストラドル/ストラングル戦略(上にも下にも大きく動けば利益になりやすい組み合わせ。方向を当てにいかない手法)が選択肢になる。
日銀が想定された25bp利上げを実施しなければ、ドル/円は160〜162円へ急伸する可能性がある。短期のコールオプション(一定の価格で買う権利。円安=ドル高で利益になりやすい)を、権利行使価格159円近辺で持つ戦略が考えられる。タカ派的据え置きは政策の失敗と受け止められ、円が急落(円安)するリスクがある。
ただし160円を超える動きは、財務省の為替介入を招く公算が大きい。2022年には、ドル/円が152円近辺に接近した局面で、当局は総額9兆円超を投じて円買い介入に踏み切ったとされる。片山財務相の警告は同様の対応を示唆しており、ドル/円上昇で得た利益が、介入で155円方向に押し戻され急減するリスクは無視できない。
一方、日銀が25bp利上げを実施すれば、円は短期的に強含む可能性が高い。この場合はプットオプション(一定の価格で売る権利。円高=ドル安で利益になりやすい)が手段となり、ドル/円は155円方向の動きを狙う展開が想定される。利上げは、傷ついた日銀の信認回復に一定の効果がある。