アルベルト・ムサレム米セントルイス連銀総裁は、中東戦争に伴う原油価格の急変(オイルショック)が、コアインフレ率(食品とエネルギーを除いた物価上昇率)を押し上げている可能性が高いと述べた。コアインフレ率は年内を通じて3%近辺で推移すると見込む。
また、供給ショック(供給不足や物流混乱で価格が上がること)は、FRB(米連邦準備制度理事会)の目標である物価安定と雇用の最大化を脅かし得ると指摘した。現在の政策金利(フェデラルファンド金利)の誘導目標レンジは当面、適切である可能性が高いとも述べた。
ムサレム総裁は、今年のGDP(国内総生産)の見通しを1.5~2%へ下方修正した。戦争前は2~2.5%を見込んでいたという。戦争が個人消費に与える明確な影響は、まだ確認できていないとした。
関税(輸入品にかける税金)の影響が弱まることが、インフレ率の低下に寄与するとの見方も示した。さらに、住宅インフレ(家賃や住宅関連コストの上昇)が望ましい方向に向かっているとも述べた。
成長が鈍化すれば失業率が上昇する可能性があるとし、上昇幅は0.2%ポイント程度(数分の1%ポイント)になり得ると語った。
なお、コアインフレ率が高止まりする中、2026年3月のCPI(消費者物価指数)の前年比が3.1%だったことを踏まえると、金利見通しの修正が必要になる。これらの発言は、市場がこれまで考えていたより長くFRBが利下げを見送る可能性を示す。デリバティブ(先物・オプションなどの派生商品)市場では、夏の利下げを織り込むポジションの見直しや、タカ派的な据え置き(利上げ寄りの姿勢で金利を維持)で利益を狙う戦略が意識されそうだ。
地政学リスクによる原油ショックで、ブレント原油(国際的な原油価格の代表的指標)は2025年末の1バレル90ドル割れから、今四半期に100ドル超へ上昇した。これがインフレの主要因とされる。価格変動への備えとして、エネルギー株ETF(上場投資信託)に連動するコールオプション(一定価格で買う権利)の活用が注目される。ボラティリティ(価格変動の大きさ)も高まっており、ボラティリティ上昇に備えるポジションにも関心が集まる。
引き下げられたGDP見通しは、足元でアトランタ連銀のGDPNow(高頻度データでGDPを推計するモデル)がおよそ1.7%を示していることもあり、インフレ高止まりと成長鈍化が重なるスタグフレーション的(景気が弱いのに物価が上がる状態)な難局を示唆する。オプション市場では、防御的な構えとして、景気の影響を受けやすい小型株指数のラッセル2000などに対するプットオプション(一定価格で売る権利)を用いたヘッジが意識される。物価の粘着性(下がりにくさ)と景気減速の綱引きという、難しい局面が続く。
不透明感を背景に、VIX(S&P500の予想変動率を示す指数、いわゆる「恐怖指数」)は高水準が続き、この数週間は一貫して18を上回って推移している。こうした高ボラ局面では、オプション売り(保険料に当たるプレミアム受け取りを狙う取引)は損失が膨らみやすくリスクが高い。損失を限定できるスプレッド取引(複数のオプションを組み合わせてコストとリスクを抑える手法)など、リスク管理を重視した取引が有力となる。プレミアムの高さを抑えつつ、方向性の見方を反映しやすい。
住宅インフレは改善方向とされる一方、ケース・シラー住宅価格指数(主要都市の住宅価格を示す指標)の年初データでは、伸び率がやや再加速した。物価の鈍化は一筋縄ではいかないことを示しており、特定の項目の改善だけで安心はできない。こうした複雑な状況は、インフレ期待(将来の物価上昇の見通し)や金利の変動に連動する商品での取引機会を示唆する。